神楽坂毘沙門寄席 第33回「菊之丞の会」 2015/01/29
2015年の幕開けは、花禄師匠9番目のお弟子さん、柳家圭花さんです。口跡良く『狸の恩返し』をコミカルに好演。将来有望な前座さんの第一条件は、声がしっかり前に出ること。ここからはどんどん上手くなってくれそうです。
菊之丞師匠、初春らしく淡い藤色に梅の紋付姿で登場。世間話のようなマクラから『紙入』に入っていきます。女を演じるとまさに師匠の真骨頂です。いつの時代でもイザ!というときに度胸が据わるのは女性のようです。臆病で意気地のない若い浮気相手に、女のしたたかさを見せつけるあたりは世話物のお芝居を見てるよう。殿方はお分かりかとはとは思いますが、女はかくも賢く、したたかで怖いのですぞ。
ワインでほっこりのお仲入り後、菊之丞師の二席目は『芝浜』。年の瀬によく高座にかかる人情噺です。何人もの噺家さんで聴いていますが、夫婦の心情の機微が表現できる力量というのは、芸人さんとしてのキャリアというよりも、その人の歩んだ人生経験が培ってくれるもののような気がします。反省して酒を絶った亭主と良くできた女房との、大晦日の晩の会話が聴かせ場です。嘘をついてしまったことの訳を謝りながら語るおかみさんに、そこまで思っていてくれたのかと亭主は心打たれます。ここでのやりとりに、もう少ししみじみとした間が欲しいと思ったのは私だけでしょうか。このあたりは師匠ご自身が齢を重ねることでにじみ出てくるのではと、この先が楽しみでもあります。
寒さ一入の晩にもかかわらず、満席札止の盛況でした。次回の「第34回菊之丞の会」は4月9日(木)に予定されています。そして今年も古今亭菊之丞プロデュースの神楽坂伝統芸能2015「神楽坂落語まつり」が、6月27日(土)・7月4日(土)に開催されます。予約開始は4月16日(木)から。どうぞ皆様お誘い合わせの上お運びくださいませ。
神楽坂がん子