神楽坂毘沙門寄席 第30回「菊之丞の会」 2013/12/5
前回に続いて登場の入船亭ゆう京さん、『たらちね』の開口一番です。「自らことの姓名は~」の言い立てが少し違った長めの型でしたが、よどみなく歯切れよく笑わせてくれました。この調子で二ツ目、真打へと駆け昇って欲しいですね。
菊之丞師匠、にこやかに高座へ。噺家さんの出とお辞儀の仕方にも各々違いがありますが、師匠は一瞬会場を見渡してからニッコリ笑顔で頭を下げます。世間話のようなマクラからお馴染みの一席『短命』へ。勘の鈍い植木職人と訳知り顔の大家さんとのチグハグなやりとりが笑わせます。終盤はパワフルなおかみさんの存在感が凄い!茶碗にご飯をよそうにもお櫃からそのままダイレクト。しゃもじなんざぁ要りません。強く生き抜く女はこれでなきゃと納得です。それで旦那さんも長命なら文句なしでしょう。
今回はワインや発泡酒、スピリッツのサービスも加わってのお仲入りでした。続いての二席目は『文七元結』。三遊亭圓朝師のこの名作人情噺は、お芝居でもよく上演されます。前に私も尾上菊五郎の長兵衛、菊之助の文七役を大いに楽しみました。次に是非観てみたいのは片岡秀太郎丈の吉原佐野槌の女将でしょうか。こんなキャスティングを勝手に考えたりするのも、落語を聴くときの自己流の楽しみ方にしています。博打で身を滅ぼしてしまった左官職人、親思いのけなげな娘、それを愛する後妻のおカミさん、大店の旦那と使用人…巧みに演じ分けられた様々な登場人物の中に、一人も悪人が登場しなかったことに後で気付かされます。
先月後半の小春日和から、今日まで好天が続いています。終演後のおじさんたちは今夜も居酒屋放浪ですか?次回の菊之丞の会は来年4月3日(木)。鬼が笑う間もなく月日は流れますが、どうぞまたお運びください。笑門来福…皆様にとって良い年が訪れますよう。
神楽坂がん子