神楽坂毘沙門寄席 第25回「菊之丞の会」 2012/09/6
久しぶりの菊之丞の会は、前座の柳亭市也さん『のめる』で幕開け。開口一番は会場の雰囲気を作るトップバッターです。緊張感の中でもノビノビとした高座をこなしてくれました。胸の内では何だか親心のような気持ちで、応援しながら聴いてしまうオバサンです。
菊之丞師匠の登場で、会場の雰囲気がグッと柔らかになりました。すっかり落ち着きというか貫禄さえも感じさせます。『死ぬなら今』は演題の意味が最後に納得できる一席です。昔も今も「地獄の沙汰も金次第」なのか、恐いはずの地獄の番人達もお金には弱いようで笑えます。噺の中の「地獄寄席」の出演者は、志ん生、文楽、圓生の超豪華版。談志が前座さんなんですから、地獄はイヤですがここはぜひ覗いてみたいですね。
お仲入り後の二席目は怪談噺、三遊亭円朝作『真景累ヶ淵』から『豊志賀の死』。富本節の師匠、豊志賀のところに稽古に通ってくる若い新吉。師匠と弟子の立場が、男女の関係に発展したあたりから悲劇が始まります。豊志賀が若い弟子のお久と新吉の中を邪推しながら、形相が変わってゆくところで一段と怖い展開に。会場の照明も暗く落とされ、客席はシーンと聴き入っていました。圓朝師の数々の名作は二十代の頃に創作された聞き、作家としても天才的な力量を備えた、不世出の落語家さんだと改めて感じさせられます。
怪談噺の後はお客さんの気持ちを和ましてお返しするのが寄席の流儀とか。普段から日舞の稽古に励んでいる師匠が、「夕暮れ」を踊ってくれました。舞いながら「もうすぐ終わります」なんて笑わせますね。
終演後に一歩外に出ると、連日の猛残暑という現実に戻されます。もういい加減ウンザリ。涼風が恋しくてたまりません。
神楽坂がん子