毘沙門寄席 第14回「菊之丞の会」09/6/11
「菊之丞の会」二度目のお目見え、志ん坊さんは「手紙無筆」。今日も若々しいメリハリの利いた声で、噺はテンポ良く展開されて絶え間なく笑いを誘います。好感の持てる前座さんです。
毎年恒例の豪華客船航路(仕事らしいです)からのご帰還だそうで、久しぶりの陸高座にホッとした表情の菊之丞師匠。長屋の家主でもある大店の旦那の義太夫に、周りはもうテンヤワンヤ。お馴染み「寝床」です。長屋の店子衆とお店連中の逃げ口上に詰まった番頭茂造と、それに腹を立ててふて寝してしまう旦那とのやり取りが滑稽です。圧巻は皆からのご機嫌の取り直しに、照れながらも嬉しくなって応じてしまう家主の無邪気さを、その独り台詞で表現する芸の力量です。ここを持味とした先の文楽師匠を思わせてくれました。
仲入り後は太神楽、翁家勝丸さん初登場。会場の熱気に押されて緊張気味に見えましたが、「しっかり、やんなさいよ!」の声が掛かって会場は大爆笑。トツトツとした勝丸さんの口調にも自然な笑いが湧き起こります。「立てる・投げる・廻す」という太神楽の基本から、客席に下りての高度な芸までを披露してくれました。最後は忘年会に間に合う(!?)手拭を顎に乗せる珍芸の伝授…サァ、私もお稽古開始しよう!
トリの菊之丞師は「茶の湯」。根岸の里の侘び住まいで風流な趣味に興じるはずが…お茶の作法を知ったかぶりの二人は、「青黄な粉」やら「椋の皮」を使った地獄の茶道を始めます。これに招かれる客の方こそいい迷惑。挙句の果てには材料費をケチった奇妙なお菓子まで食わされることになって、被害はますます甚大に。師匠の「まず~い」の表情が印象的で、帰り道でも思い出し笑いをさせられてしまいました。
東京地方も入梅です。「今日は降らなくて良かったですね」と言ったら、雨男の師匠には皮肉に聞こえたようで、ゲンコツでゴツンの手つきが返ってきました。
神楽坂がん子