第1回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2009/5/28
毘沙門寄席にお待ちかねの新シリーズです。まずは神楽坂のお客さまにご両人からご挨拶。涼しげな渋い茶系でまとめた扇辰師匠に対し、三本ライン入りアディダスウェアーかと見まがうばかりの黄緑の着物に、真っ赤な襟元というハデハデ白鳥師匠。ともに新潟出身という対象的なお二人の掛け合いに、会場はスタートからハイテンションです。
一席目は扇辰師匠の「夢の酒」。何とも可愛いおカミさんを演じます。夢の世界にやきもちを焼くなんて、近頃じゃ珍しい純真さ!言葉遣いの美しさと女を演じる巧みな所作に見入ってしまいました。それにしても手数のかかる夢を見たもんです。
白鳥師匠は「ねずみのようなもの」。古典でお馴染みの「ねずみ」ですが、この噺家さんの魅力は型を破るところ。何と扇辰版CDをベースに創作とか…。前半は客引きの子供卯之吉と客の左甚五郎との噛み合わない会話に大爆笑。甚五郎が松の木から彫ったねずみの名前が「ミッキーマッツ」、リピーターは「裏を返す」でパスポートは「馴染み」とは、もうディズニーランドに廓が引っ越してきたような大騒ぎです。挙句の果てに虎が登場するともうそこは童話の世界。最後は仙台銘菓「萩の月」の由来に行き着いて…もう唖然です。
毘沙門寄席初体験の方々から思わず歓声が挙がった「お仲入りワインタイム」後に、白鳥ワールド二席目は「山奥寿司」。山で採れたものをいかにして海のものに見立てるか…寿司屋店主の工夫がテンポ良く続出。会場は爆笑の渦。高座を下りる師匠の背中の紋「SWA(創作話芸アソシエーション)」が輝いて見えました。
トリの「百川」前に扇辰師、ポツリと「今日は演目を変えようかと…」に会場は一瞬「?」。さっきの「ねずみ」に対して「ものには限度ってものがあるでしょう。あそこまで変えちゃうと、ねぇ~」に会場は改めて大爆笑。このネタの大御所、円生師匠とはまた違った可笑し味で、江戸弁の歯切れの良さと、田舎言葉行き違いの妙を楽しませてくれました。
終演後に外へ出ると生憎の雨降りでした。熱演に沸く毘沙門天書院ホールの賑わいは、そんなことを忘れさせてくれていたようです。
神楽坂がん子