毘沙門寄席 第十三回「菊之丞の会」 08/12/04
元気良く最初に登場は春風亭正太郎さん、正朝師匠たった一人のだから一番弟子だそうです。お馴染みの「たらちね」で八五郎の婚礼を滑稽味たっぷりに。若々しく張りのある発声には好感が持てます。
菊之丞師匠の一席目はご自身の失敗談をマクラに「替り目」へ。毎晩、酔っ払っては家の前で車屋を捕まえる旦那と、ひたすら車夫に謝るおカミさん。玄関を閉めた後に柔和な奥様の顔は豹変してしまいます。表情と間合いだけでの芸の見せ所に満場は爆笑。このネタのバイブルともいえる志ん生師匠の芸を受け継ぎながらも、新しい工夫をうまく取り入れて菊之丞流の噺に仕上がっていると感じました。今夜も新橋あたりでウロウロしているお父さんたちは、家に帰ると奥さんにどうあしらわれるのでしょうね?
林家花さん。女性初の紙切師…ということは世界でただ一人でしょうか?紙切りはデフォルメの芸、強調する特徴を一瞬のうちに鋏一丁で産み出していきます。会場のお客さんも一瞬にして作品になりました。初々しい花さんの活躍に期待します。
トリの菊之丞師は「干物箱」。苦労知らずで道楽者の若旦那、声色上手な善公に自分の身替りを頼み、その間に廓へ出掛けようとします。でも二階の善公、大旦那から矢継ぎ早の質問攻めに遭いバレそうになり、かぶった布団も剥がされて万事休す。そうとは知らない若旦那、親父さんに怒鳴られて、「善公は器用だ!親父そっくり」。三者の人物描写に力量が発揮される噺で、先の文楽さんの十八番でしたね。
早くも師走。あわただしい中でも笑う時間の余裕は大切にしたいものです。来る年も元気に毘沙門寄席でお会いしましょう。
神楽坂がん子