毘沙門寄席 第11回「菊之丞の会」08/6/12
「若さって、いいねぇ」と思わず言いたくなるような清々しい志ん坊さん。願い叶って犬が人間になるという「元犬」で初登場です。風変わりな奉公人がお店にやってくる大騒動を、張りのある声とイキイキとした表情で楽しませてくれました。
菊之丞師匠の一席目は季節感を先取りして「青菜」。上方落語でお馴染みの私も大好きな噺です。暑い頃を涼しくという良家の旦那の工夫がオシャレで、粋な言葉遊びに加えて植木屋さんのベランメエ調が歯切れ良く響きます。でも圧巻はおカミさん。その豪放磊落な迫力が満場の爆笑を誘います。
お次は「わぁ~、カワイイ」の声に迎えられてうめ吉さん、結い髪と縞の着物で艶やかに登場しました。三味の音に乗せて「佐渡おけさ」に始まり、都々逸、品川甚句、小唄と愛らしい喉を披露。気風のいい他の俗曲のお姐さん方に比べて、この人は「癒し系音曲師」でしょうか。最後はユーモラスな「茄子と南瓜」を踊って、会場を和ませてくれました。
トリは菊之丞師の「景清」。先の文楽さんの十八番でしたね。眼が不自由な定次郎はその視力を取り戻したい一心でお参りを続け、さて満願の日を迎えるが…。巷では陰惨なニュースがあったばかりのこの日だったので、予定の演目を変更して人情噺を熱演したのは師匠の心配りでした。「佃祭」はまたのお楽しみに。
「雨男・菊之丞」なのに梅雨空が月夜に変わり、笑顔のお客様は足元も軽く帰路に着かれました。写真うめ吉さん右隣の嬉しそうな大きな顔は、菊之丞の会ポスターのイラストレーター、小森さんです。
神楽坂がん子