神楽坂毘沙門寄席 第48回「菊之丞の会」レポート (2020/1/29)

第48回菊之丞

今年最初の「菊之丞の会」、多くの皆様のお運びで大盛況です。
厳しい前座修行も何のその、天然の明るさで元気に乗り越えている様子のまめ菊さん、『狸札』で幕開けです。回を重ねる毎に発声にも落ち着きが出た感じで、落語らしい語りが身についてきました。うっすらと額の汗が光った熱演でした。

藍に近い紺色のお召物は菊之丞師匠には珍しく感じましたが、キリッと見えて良くお似合いです。一席目は『火焔太鼓』。落語の世界では、ボーッとした亭主と気が強く逞しいおかみさんがいつもセットになっていて、お互いがのべつ悪態もつきますが本当は仲睦まじい夫婦なんです。滑稽味と親愛に溢れたやりとりには、かつての師匠にあたる古今亭圓菊さんの面影が感じられ、懐かしくも嬉しくなってしまいました。そこはかとない可笑しさに思わずクスッと笑ってしまう…流行りの低俗なお笑い芸とは明らかに一線を画す、落語の良さはそんな所にあります。

ワインやお茶のサービスでのお仲入り後は、吉原を舞台にした廓噺『付き馬』。怪しげな飄客は飲めや歌えやの無銭での大散財の挙句、朝になると廓の若い衆を連れ出して、朝湯に朝飯にと小銭までも巻き上げてしまい、とうとう若い衆は特大の早桶まで背負わされて…。加害者なのに憎めない、被害者を見ても笑えてしまう…これも古典落語の持つ不思議な魅力なんでしょうね。少ない登場人物ですがそれぞれが個性的で、演じ手の高度な人物描写が光った大当りの一席でした。

早くも月末ですが、お正月記念に写真中央はお馴染みになりましたイラストレーターの小森傑(すぐる)さんです。
次回の「菊之丞の会」は、2020年4月9日(木)が予定されています。まだまだ先と思っていても、時の経つのは早いものといつも感じてしまいます。チケットは開催日の一ヶ月前から販売・前売り予約開始です。どうぞお忘れなく。詳細はHP等をご覧ください。

神楽坂がん子