神楽坂毘沙門寄席 第55回「菊之丞の会」レポート (2024/1/25)


第55回菊之丞の会

2024年「菊之丞の会」新春の幕開けです。開口一番は初登場の三遊亭まんとさん。前座さんとは思えない落ち着きぶりで『狸の鯉』を好演。生粋の東京っ子と思われるくらいの達者な江戸弁が心地よかったのですが、高知県出身とのことに驚きました。まだまだ上手になりそうと感じさせる有望若手です。

菊之丞師匠の一席目は『天狗裁き』。上品な淡い色のお召し物に、梅の紋が初春にふさわしくお似合いです。見てもいない夢の話を聞きたがる面々が、次々と騒ぎを大きくしてしまいます。「女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、家主、奉行までもが…」というセリフが繰り返されると会場は笑いの渦。でも師匠、私にだけは教えてください。いえ、口の堅い私は他言など決していたしません。ホントはどんな夢を見たんですか?

お中入り後は目にも鮮やかな紫の装いで登場。二席目は今の季節にピッタリな『二番煎じ』。夜寒の中をゾロゾロと歩く旦那連中の火の廻りです。黒川先生、伊勢屋の旦那、辰っつあんが次々に「火の用~心」と掛け声を出す場面では、師匠が自慢のノドを披露して拍手が湧き上がりました。番小屋に戻って、冷え切った身体に燗酒が入った途端に気が遠くなるような心地よさの表情は秀逸でした。かなりイケる口の師匠ならではの至芸なんでしょうね。

私の連れのオジサンたちは、「今夜は猪鍋に熱燗だね」と話しながら、北風の中を神楽坂の居酒屋方面へいそいそと消えていきました。
次回の「菊之丞の会」は良い気候の4月18日です。お誘いあわせの上どうぞまたお運びください。

神楽坂がん子