神楽坂毘沙門寄席 第60回「菊之丞の会」レポート(2025/10/16)

神楽坂毘沙門寄席 第60「菊之丞の会」 2025/10/16

暑く厳しい夏からようやく解放されての「菊之丞の会」。前々回に引き続きの前座さん、隅田川わたしさんの『たらちね』で幕開けです。充分な声量と演技力は大器の片鱗を感じさせます。所作と語り口にときどき馬石師匠がのぞくのが嬉しいです。大川(隅田川)を力強くわたりきり、落語界で広く大きく羽ばたいて欲しい若手…もはや母親の心境でしょうか。

粋な縞模様のお召し物に鶯色の羽織姿の菊之丞師匠、高座に上がると会場の空気がパァーッと華やかに。もとは講釈ネタの名工モノ『浜野矩随(のりゆき)』です。講談、落語と多くの演者によって語られていますが、矩随のお母さんが亡くなるかどうかの終盤が、いつも聴く前から気になります。菊之丞師は命をかけて息子の精進を祈った母親の必死さをしんみりと演じました。それにしても死なせてしまうなんて…早めに次はどこかで、お母さんが生き残る演り方のこの噺を聴きたいです。でも、最後に若狭屋の旦那が「カッパ狸」で大儲けするところでは大笑いしてしまいました。

お仲入り後の登場は鮮やかな紫の着物に黒羽織で、二席目は『三枚起請』。騙し騙されの吉原の世界は凄まじいですね。嘘がばれて詰め寄られた三人の客を前に、段々と開き直ってゆく海千山千の遊女のふてぶてしさが、憎たらしくも色っぽく演じられました。客を迎える女将の滑稽な所作とおしゃべりと言い、このテの女性の秀逸な表現は、菊之丞師のまさに真骨頂です。

11月3日まで「2025神楽坂まち飛びフェスタ」開催中。さまざまな「まちの文化祭」イベントをどうぞお楽しみください。

次回「第61回菊之丞の会」は、2026年1月22日(木)が予定されています。いずれも様、来る年もまたお誘い合わせの上、賑々しくお運び下さりますよう、御願い申し上げ奉りまするゥ~。

神楽坂がん子