第26回 志らく四季の会 冬の部 10/1/21
らく太さん、今年の毘沙門寄席一番手に登場で「二人旅」です。前座さんはこれから始まる寄席の雰囲気を盛り上げる役割も担います。「三人旅は一人乞食」、仲間外れのない二人旅が一番…と謎掛け問答の道中が滑稽です。
続いての志ら乃さんは、場所中でもあり「花筏」。大の相撲好きな提灯屋が、「朝は米二升、酒二升、夜も同じで二日間、締めて八升(勝)。勝ち越しだ」の甘い言葉につられて大関の替え玉になる破目に。表情の豊かさとスピード感たっぷりの話ぶりが爆笑を誘います。
志らく師匠の一席目、本来は前座噺ともいわれる「狸賽」でしたが、細部にわたる個性的な工夫は流石です。噺のマクラの「胃カメラ」体験談では場内が沸き、経験のある私も思わずうなずいていました。ところで私の大発見です。師匠のお辞儀姿の何と「美しい」こと!扇子の置き方、指のつき方、頭の下げ方がとても丁寧で、首から背中にかけての線が何ともカタチ良く美しく見えるのです。
トリは本来なら歳の瀬に演じられる「芝浜」。多くの師匠の名演が録音にも残りますが、私は上手な噺家さんの必須条件として、「女を演じる力」を挙げたいと思います。貧しかった頃の一途で健気なおカミさん、商売も軌道に乗ってからの落ち着いたおカミさんを、志らく師は巧みに演じ分けました。「魚屋のお前さんが好きだったんだよ」の一言には思わずホロリとさせられます。
年が明けたと思ったら早三週間が経ちます。今年も数々の上質な演芸が神楽坂から発信されます。皆さまどうぞご期待ください。
神楽坂がん子