2023年初の「菊之丞の会」です。東京にもこの冬一番の寒波襲来の日でしたが、多くのお客様で盛況となりました。
前座に初登場は、柳家小八師匠門下の柳家しろ八さん。お辞儀するや否や扇子が高座下に飛び出すハプニングにもめげず、さわやかに『道灌』を好演。口跡の良さと声のトーンが耳に心地よく響きました。真面目さが窺える前座さんは応援したくなります。
初春らしいクリーム色のお召物にエンジ色の半襟がおしゃれな菊之丞師匠登場。高座ワキが寂しいと思ったら「めくり」がなく、師匠が忘れてしまったようで客席からは失笑がもれました。一席目『三枚起請』、騙し騙されの吉原が舞台の廓噺です。リベンジに向かう三人と見世の女将との掛け合い場面が滑稽で、手練手管の遊女を演じる様子は、目の動きを見ているだけでも笑えます。それにしても嘘がバレると逆に開き直る女は手強い!
お仲入り後はシックな茶のお着物に黒羽織で再登場です。二席目は歌舞伎、講談などでもお馴染み『文七元結』。予告なしの大ネタが出て嬉しくなりました。父親の博打の借金返済を、娘のお久が吉原に身を売って助けようとします。大見世「佐野槌」で「娘をカタに金を貸してあげても客を取らせたりはしない」という人情女将の、「但し返済が一時でも遅れたら、アタシはそのときには鬼になるよ」と、歌舞伎でも名女形の演じるこの台詞が私には特に印象的です。熱演はハッピーエンドで幸せな気分になれました。
次回「菊之丞の会」は、4月20日に開催予定。プロデューサー菊之丞顔付けの恒例「神楽坂落語まつり」は、6月25日(日)、7月1日(土)の両日に開催されます。詳しくはWEBやチラシでご覧ください。
神楽坂がん子