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神楽坂 毘沙門寄席

神楽坂毘沙門寄席 第32回 「菊之丞の会」  レポート 2014/10/02

第32回 菊之丞-320

神楽坂毘沙門寄席 第32回「菊之丞の会」 2014/10/02

前座さんは一度聞いたら忘れられない芸名の柳家フラワーさん。花禄師匠のお弟子さんです。妙に落ち着いた風貌で『元犬』を好演してくれました。二つ目昇進が間近で、今度は花飛(かっとび)さんに改名とのことです。

菊之丞師匠、真っ赤なフカフカのニュー座布団に鎮座した様子は、なんだか仏壇のおりんのようで神々しい(失礼?)。一席目は怪談「番長皿屋敷」のパロディー版とでもいいましょうか『お菊の皿』。私は上方では枝雀師匠、江戸前では小朝師匠のこの噺が好きです。美人の幽霊お菊さんが人気沸騰で、会場の皿屋敷は満員の盛況。営業スマイルも芸人並みについて、お決まりのセリフがクサくなってゆくところには笑わせられます。

お仲入り後の二席目は『居残り佐平次』。私には日本の映画史に残る日活映画『幕末太陽伝』で、佐平次を生き生きと演じたフランキー堺さんが目に浮かびました。悪い奴には違いない主人公ですが、あそこまで人を乗せてしまう手腕はアッパレとしか言いようがありません。「いま勘定のことたァ忘れて遊んでんだから」と若い衆を煙に巻くテンポ、「あーた色悪だよホントに、色魔!」なんて幇間顔負けの客あしらいは実に見事なもんです。

秋なのにお客さまの人いきれで会場ではエアコンが作動していましたが、さすがに終演後の屋外は少しひんやりと感じます。年内の菊之丞の会はこれで終了。改めて月日の過ぎていく早さを感じますね。10月18日(土)からは毎年恒例のまちの文化祭、「神楽坂まち飛びフェスタ2014」が開催されます。どうぞお楽しみにお運びください。

神楽坂がん子

神楽坂 毘沙門寄席 第32回 菊之丞の会 (2014/10/02)

32回菊之丞の会A3ポスター

神楽坂ファンの皆様、寄席ファンの皆様こんにちは。

2014年10月2日に第32回神楽坂毘沙門寄席「菊之丞の会」を開催いたします。
江戸前噺を得意とする、粋でしなやか菊之丞。今回は秋の夜の神楽坂にふさわしく廓噺でお楽しみください。

男を骨抜きにするはずの遊里を手玉にとって、弁口さわやかに煙に巻く佐平次・菊之丞に、乞うご期待!

皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。


◆◆ 神楽坂毘沙門寄席 ◆◆
”第32回 菊之丞の会”

◆公演日程

・2014年10月2日(木)
18:30 開場
19:00 開演

◆会場

・神楽坂 毘沙門天善国寺書院  (神楽坂5-36)
JR飯田橋駅、地下鉄有楽町線飯田橋駅B3出口 徒歩5分
東西線神楽坂駅(神楽坂口) 徒歩6分
大江戸線牛込神楽坂駅(神楽坂口)徒歩7分

◆番組(予定)

・落語  開口一番         柳家フラワー
・落語  「居残り佐平次」他一席   古今亭菊之丞

◆料金及びチケット

・定員100名(座布団・自由席)。 先着順。
※多くの皆様にお楽しみ頂けるよう、混み合う際は、お膝送りなどご協力下さい。
※足腰がご不自由で、どうしても座布団にお座りになれない方は受付にてお申し付け下さい。
数は限られますが、椅子をご用意致します。
・木戸銭 2500円(前売2200円)【チケット販売・予約】9月2日より
《店舗販売》チケットは神楽坂通りの下記お店でお求め頂けます。
山下漆器店  新宿区神楽坂5-13(「神楽坂上」交差点近く)
電話03(3269)2385《電話・メール予約》
・遠方の方は、メール、電話でのお申込みも受けつけています。
03-6426-1728
受付時間 土日祭日を除く 月~金曜日 11時~18時
ikimachi@syoutengai-web.net
お名前、ご住所、電話番号、ご希望枚数をお知らせ下さい。
お支払いは当日、受付にて承ります。
なお当日のチケット交換は6時半までにお済ませ下さい。
また、一度お申し込み頂きますとキャンセルは出来ませんのであらかじめご了承下さい。

◆主催

NPO法人 粋なまちづくり倶楽部

◆共催

神楽坂まちづくりの会

◆お問合せとお申込み

・NPO法人粋なまちづくり倶楽部事務局
(担当 日置圭子)
電話03-6426-1728
ikimachi@syoutengai-web.net
https://ikimachi.net/

神楽坂毘沙門寄席 第31回 「菊之丞の会」  レポート 2014/04/10

31回菊之丞の会-320

神楽坂毘沙門寄席 第31回「菊之丞の会」 2014/4/10

 前座修行中とおでこに書いてありそうな生真面目青年、柳家小かじさん初登場。三三師匠のお弟子さんです。開口一番『道灌』で元気よく笑わせてくれました。また来て欲しいと思わせる体格の良いクリクリ坊主さんでした。

 菊之丞師匠、縞の着物でにこやかに高座へ。「8億円借りてみたいですね~」と、いきなり社会風刺をチクリ。私たちの世界とは桁が違う金額がケータイメール1本で行ったり来たりって、信じられな?い。お馴染み『寝床』の面白さは、義太夫狂いの大店の旦那の表情変化のプロセスとでもいいましょうか。ウキウキと自分の義太夫の会を準備していたはずの顔から、誰も来たがらないことで怒り心頭へと一転。そこからまた機嫌を直し、相好をグズグズに崩していく様子の描写が見せどころ、聴かせどころでした。中央最前列で熱心に聴いていたかわいいお客さんがいたので、写真に入ってもらいました。「あすこはアタシの寝床なんでございます」と泣いた定吉どんは、このくらいの坊やだったんでしょうね。

 今回もワインサービスのお仲入り。続いての二席目は三遊亭圓朝作『死神』です。六代目圓生師匠の代表ネタでしたね。会ったこともないはずですが、何となく死神さんの風貌が目に浮かび怖かったものです。演じる噺家さんと時代に合わせて、死神を追い払うおまじないの文句が変わります。「アジャラカモクレン○○○○、テケレッツノパー!」の○○部分には、この日は話題のリケジョの名前が入って、場内がドッと沸きました。こんな風に病気が治せたら最高ですよね。

 桜も散って乾燥した好天が続いています。夜はまだまだ冷え込みます。公演のあとで一杯のお父さんたちもほどほどにご帰宅を。第6回「神楽坂落語まつり」は、6月28日(土)と7月6日(日)に開催されます。またどうぞお楽しみにお運びください。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第30回 「菊之丞の会」  レポート 2013/12/05

第30回菊之丞の会-320

神楽坂毘沙門寄席 第30回「菊之丞の会」 2013/12/5

前回に続いて登場の入船亭ゆう京さん、『たらちね』の開口一番です。「自らことの姓名は~」の言い立てが少し違った長めの型でしたが、よどみなく歯切れよく笑わせてくれました。この調子で二ツ目、真打へと駆け昇って欲しいですね。

菊之丞師匠、にこやかに高座へ。噺家さんの出とお辞儀の仕方にも各々違いがありますが、師匠は一瞬会場を見渡してからニッコリ笑顔で頭を下げます。世間話のようなマクラからお馴染みの一席『短命』へ。勘の鈍い植木職人と訳知り顔の大家さんとのチグハグなやりとりが笑わせます。終盤はパワフルなおかみさんの存在感が凄い!茶碗にご飯をよそうにもお櫃からそのままダイレクト。しゃもじなんざぁ要りません。強く生き抜く女はこれでなきゃと納得です。それで旦那さんも長命なら文句なしでしょう。

今回はワインや発泡酒、スピリッツのサービスも加わってのお仲入りでした。続いての二席目は『文七元結』。三遊亭圓朝師のこの名作人情噺は、お芝居でもよく上演されます。前に私も尾上菊五郎の長兵衛、菊之助の文七役を大いに楽しみました。次に是非観てみたいのは片岡秀太郎丈の吉原佐野槌の女将でしょうか。こんなキャスティングを勝手に考えたりするのも、落語を聴くときの自己流の楽しみ方にしています。博打で身を滅ぼしてしまった左官職人、親思いのけなげな娘、それを愛する後妻のおカミさん、大店の旦那と使用人…巧みに演じ分けられた様々な登場人物の中に、一人も悪人が登場しなかったことに後で気付かされます。

先月後半の小春日和から、今日まで好天が続いています。終演後のおじさんたちは今夜も居酒屋放浪ですか?次回の菊之丞の会は来年4月3日(木)。鬼が笑う間もなく月日は流れますが、どうぞまたお運びください。笑門来福…皆様にとって良い年が訪れますよう。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第29回 「菊之丞の会」  レポート 2013/09/12

第29回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第29回「菊之丞の会」 2013/9/12

入船亭ゆう京さんは扇遊師匠のお弟子さんです。携帯電話が鳴らないように注意をうながすのも、今や前座さんの仕事となりました。よどみない話しぶりの『嘘つき弥次郎』で笑わせてくれました。先が楽しみな若い芸人さんがまた一人増えて嬉しく思います。

菊之丞師匠、縞の着物でにこやかに登場。お馴染みお酒呑みの一席は『親子酒』です。呑兵衛にとって酒を断つというのはなかなか辛いことのよう。禁酒の約束はしたものの、手持無沙汰でついつい酒に向かってしまう大旦那と、おかみさんとのやり取りが聴かせ処です。禁を破って久々に飲んだ酒が身体に滲み込む様子を、「お腹の中で、あら久しぶり。お婆さんによろしくって言ってるよ」なんてあたりは、可愛い冗談で許せてしまいます。

サービスのワインの香り漂うお仲入り後、菊之丞師の二席目は左甚五郎が主人公の『ねずみ』です。落語の名工物語はもともと講談で演じられたものが多いと聞きますが、これは浪曲ネタとのこと。どれもスジ立てが分かりやすくスッキリしていて、聴く人を楽しませてくれます。日本人なら誰もがそう感じますよね。木彫りの福ねずみによって、仙台城下の落ちぶれた旅籠が繁盛宿屋に変わっていく展開が嬉しく、名人甚五郎作のねずみから見ると、虎もネコになってしまうというサゲは痛快です。

次回の菊之丞の会は12月5日(木)。もう師走なんですね。記録的な猛暑日が続いた異常気象の中、皆様よく乗り越えられました。まだ少し残る蒸し暑さがなくなれば、待望の秋到来、忠臣蔵の季節へと続きます。本当に「待ちかねたぁ」です。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第28回 「菊之丞の会」  レポート 2013/05/09

第28回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第28回「菊之丞の会」 2013/5/9

初登場の前座さん、金原亭駒松さんは馬生師匠のお弟子さん。ちびまる子ちゃんに登場するハマジ君みたい、との菊之丞師匠の形容に思わず納得。張りのある大きな声でお馴染み『道具屋』の熱演でした。体育会系風の元気さで精進して欲しいと思います。

新しくなった真っ赤な座布団に、紫のお召し物で決めた菊之丞師匠が座ると何とも派手です。この度の芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(確かに長くて覚えにくい)お目出当ございます。高座でプライベートを話題にするのは珍しい師匠が、ご結婚のダブルの喜びを話され、今の幸せに酔っておられる様子でした。一席目は『天狗裁き』。「他人の夢の話なんて聞きたくはない…が、」は何度も笑いを誘うフレーズです。詮索好きの人たちや天狗様にはホントに困ったもの。こんな輩には黙っていた方が得策です。だけど八五郎さん、口の堅い私だけには、どんな夢だったのかちょっとだけでいいから話してくださいな。

お仲入り後は『湯屋番』。道楽が過ぎて勘当の末、居候という身の上の若旦那が、日本橋のお湯屋、奴湯に奉公することになります。念願の番台に座ってからの自惚れ屋の妄想シーンを、テンポ良く展開してゆく下りが菊之丞師の真骨頂です。艶っぽいお妾さんとの芝居がかったセリフ回しは聴かせどころで、ついつい私もあっけにとられ、風呂場から番台を見つめる男湯の面々と同じに顔になっていたのでは。それにしてもこの師匠にぴったりの滑稽噺ですね。

終演後は菊之丞師匠の御祝の会が準備されていました。若葉のきらめく良い季節です。6月29日、7月1日の両日は、今年も『神楽坂落語まつり』が開催され、古今亭菊之丞の活躍が続きます。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第26回 「菊之丞の会」  レポート 2012/10/25

第26回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第26回「菊之丞の会」 2012/10/25

林家つる子ちゃんと呼びたくなる可愛らしい前座さん初登場。林家正蔵師匠の六番弟子です。元気に『元犬』を聴かせてくれました。よく通る声は素質十分で、これからの噺家さんとしての伸びシロを感じさせます。将来大きく化けてくれると信じて応援しますね。

菊之丞師匠は、鮮やかな紫色のお召し物で登場。一瞬で会場の空気がガラリと変わるのは、やはり真打の貫禄なのでしょうか。『子別れ』が上下通しで演じられるのは珍しいことと思います。大工の熊五郎は酒と女に溺れ家庭崩壊。吉原では魅力的だったはずのお姐さんも、「手に取るな、やはり野に置け蓮華草」。失ったものの大きさに後で気付くのは人間の性…という展開の前半を終えてお仲入りです。

ワインサービスの余韻の中、「皆さん、前半は覚えていますか?」と初ッ端の師匠の切り出しに会場は大笑い。今ではきっぱりと酒も絶ち仕事に精を出す独り身の熊五郎、わが子との突然の再会に家族への思慕を募らせます。元の連れ合いが気になる親同士の心中を見透かす、せがれ亀ちゃんの愛嬌ある利発さに笑わされます。涙を隠してわが子を抱きしめる父親のしぐさ、女手ひとつで息子を立派に育てようと叱る母親の情が涙を誘います。

写真の中央はイラストレーターの小森傑(すぐる)さん。「菊之丞の会」の第一回目から、師匠が演目の主役になった似顔絵でポスターに登場しています。テレビ番組「笑点」のカレンダーでも活躍中です。

菊之丞師匠が噺家を志したころから育てられた古今亭円菊師匠が、10月13日に他界されました。その優しいお人柄は篤志家としても知られ、独特なカタチでおかし味たっぷりの芸風が大好きでした。どうかこれからも「菊之丞の会」を見守ってください。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第25回 「菊之丞の会」  レポート 2012/09/06

第25回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第25回「菊之丞の会」 2012/09/6

久しぶりの菊之丞の会は、前座の柳亭市也さん『のめる』で幕開け。開口一番は会場の雰囲気を作るトップバッターです。緊張感の中でもノビノビとした高座をこなしてくれました。胸の内では何だか親心のような気持ちで、応援しながら聴いてしまうオバサンです。

菊之丞師匠の登場で、会場の雰囲気がグッと柔らかになりました。すっかり落ち着きというか貫禄さえも感じさせます。『死ぬなら今』は演題の意味が最後に納得できる一席です。昔も今も「地獄の沙汰も金次第」なのか、恐いはずの地獄の番人達もお金には弱いようで笑えます。噺の中の「地獄寄席」の出演者は、志ん生、文楽、圓生の超豪華版。談志が前座さんなんですから、地獄はイヤですがここはぜひ覗いてみたいですね。

お仲入り後の二席目は怪談噺、三遊亭円朝作『真景累ヶ淵』から『豊志賀の死』。富本節の師匠、豊志賀のところに稽古に通ってくる若い新吉。師匠と弟子の立場が、男女の関係に発展したあたりから悲劇が始まります。豊志賀が若い弟子のお久と新吉の中を邪推しながら、形相が変わってゆくところで一段と怖い展開に。会場の照明も暗く落とされ、客席はシーンと聴き入っていました。圓朝師の数々の名作は二十代の頃に創作された聞き、作家としても天才的な力量を備えた、不世出の落語家さんだと改めて感じさせられます。

怪談噺の後はお客さんの気持ちを和ましてお返しするのが寄席の流儀とか。普段から日舞の稽古に励んでいる師匠が、「夕暮れ」を踊ってくれました。舞いながら「もうすぐ終わります」なんて笑わせますね。

終演後に一歩外に出ると、連日の猛残暑という現実に戻されます。もういい加減ウンザリ。涼風が恋しくてたまりません。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第24回 「菊之丞の会」  レポート 2012/04/26

第24回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第24回「菊之丞の会」 2012/04/26

街々にも新入社員らしい若者が目に付くこの頃です。初登場の前座さんは林家正蔵師匠の五番弟子、林家なな子さん。面差しが「海老名系」なのでご親戚?…かと思いきやその関係はないそうです。元気な『転失気』はこれからの伸び代を充分に感じさせてくれました。

藤色鮮やかな小紋柄のお召物の菊之丞師匠、一席目は廓噺『三枚起請』。師匠の十八番かと思ったのですが、二つ目のとき以来のほとんど「ネタおろし」とか。騙し騙されの男女の世相は、今も昔も変わらないようです。「あら、まぁ~」「おや、わぁ~」と棟梁の話に相槌を打つ茶屋の女将と、三人に問い詰められて俄然開き直る花魁喜瀬川の描写が、この噺家さんならではの真骨頂でした。

お仲入り後の二席目は『夢金』。寝言でも「百両欲しい、二百両欲しい」とうなっている船頭の熊蔵。「娘を殺して金を山分けに」と持ち掛ける謎の侍を、中洲に置いてきぼりにして娘を助けます。ほんのお礼にと手にした金包みは百両もの大金だったが…。雪の舞い散る夜の大川の描写が風流で秀逸です。女を演じるときの師匠には天性の巧みさが光っていましたが、このところ聴く武士や荒くれ男のスゴ味ある表現にも、一段と磨きがかかってきたのを私は感じています。

桜前線は東北へ。境内ではすっかり葉桜になりましたが、若葉の緑が目にも鮮やかです。先ほどまで降っていた雨も上がって、「ちょっと行こう」のおじさんたちはニコニコと横丁に消えていきました。

昨年は震災のため中止になった恒例『神楽坂落語まつり』は、6月30日(土)と7月7日(土)に開催されます。こちらもどうぞお楽しみにお運びください。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第23回 「菊之丞の会」  レポート 2012/02/09

第23回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第23回「菊之丞の会」 2012/02/09

太鼓の音で幕が開くと、叩き手はなんと菊之丞師匠。嬉しい演出です。いろいろな寄席太鼓を解説してくださいました。一番太鼓は「どんと来い、金持って来い」、開演5分前を知らせる二番太鼓は「お多福、来い来い」、終演後は「出てけ出てけ、てんでんバラバラ」、最後は「カラ(空)、カラ」とか。寄席の太鼓はしゃべってるんですね。続いては、トリの鳴物入りの演目のため菊之丞師がお呼びした、下座三味線の金山はる師匠と出囃子の披露。前座さんの「上がり」から始まり、文楽・志ん生・彦六・志ん朝・円生・三木助・三平・円菊といった大師匠たちの高座に登場する姿が、次々と目に浮かんできました。

前座さんは柳家おじさん。この名前と親しみやすい風貌は誰でも一度で覚えます。お馴染みの「子ほめ」を、やや緊張気味ながらも忠実にこなしてくれました。

菊之丞師匠の一席目は「犬の眼」。登場人物全員が、滑稽でまるで漫画のような面々です。犬がソフトバンクのお父さん犬だったり、途中に入る「クリクリポッコン」や「クリクリドックン」といった擬音が何とも可愛らしく、会場の大きな笑いを誘います。

仲入りのワインサービスの後二席目へ。紋付の黒羽織で菊之丞師登場。お題は「たちきり」です。比較的笑いの少ない元々は上方の噺ですが、花柳界の遊び方を織り込んだ人情味溢れる演目として、江戸前の噺家さんたちも好んで挑戦されるようです。茶屋遊びに狂った末に百日間の蔵住まいを言い渡された若旦那に、毎日手紙を届ける芸者の小春…昔はこんな慎ましやかな恋愛があったんでしょうね。

今年の寒さは一入です。それでも春は少しずつ近づいてきますね。終演後に私の連れのおじさんたちは、「冷え込むので餃子鍋と紹興酒」と言って消えてゆきました。

神楽坂がん子