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神楽坂 毘沙門寄席

神楽坂毘沙門寄席 第26回 「菊之丞の会」  レポート 2012/10/25

第26回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第26回「菊之丞の会」 2012/10/25

林家つる子ちゃんと呼びたくなる可愛らしい前座さん初登場。林家正蔵師匠の六番弟子です。元気に『元犬』を聴かせてくれました。よく通る声は素質十分で、これからの噺家さんとしての伸びシロを感じさせます。将来大きく化けてくれると信じて応援しますね。

菊之丞師匠は、鮮やかな紫色のお召し物で登場。一瞬で会場の空気がガラリと変わるのは、やはり真打の貫禄なのでしょうか。『子別れ』が上下通しで演じられるのは珍しいことと思います。大工の熊五郎は酒と女に溺れ家庭崩壊。吉原では魅力的だったはずのお姐さんも、「手に取るな、やはり野に置け蓮華草」。失ったものの大きさに後で気付くのは人間の性…という展開の前半を終えてお仲入りです。

ワインサービスの余韻の中、「皆さん、前半は覚えていますか?」と初ッ端の師匠の切り出しに会場は大笑い。今ではきっぱりと酒も絶ち仕事に精を出す独り身の熊五郎、わが子との突然の再会に家族への思慕を募らせます。元の連れ合いが気になる親同士の心中を見透かす、せがれ亀ちゃんの愛嬌ある利発さに笑わされます。涙を隠してわが子を抱きしめる父親のしぐさ、女手ひとつで息子を立派に育てようと叱る母親の情が涙を誘います。

写真の中央はイラストレーターの小森傑(すぐる)さん。「菊之丞の会」の第一回目から、師匠が演目の主役になった似顔絵でポスターに登場しています。テレビ番組「笑点」のカレンダーでも活躍中です。

菊之丞師匠が噺家を志したころから育てられた古今亭円菊師匠が、10月13日に他界されました。その優しいお人柄は篤志家としても知られ、独特なカタチでおかし味たっぷりの芸風が大好きでした。どうかこれからも「菊之丞の会」を見守ってください。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第25回 「菊之丞の会」  レポート 2012/09/06

第25回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第25回「菊之丞の会」 2012/09/6

久しぶりの菊之丞の会は、前座の柳亭市也さん『のめる』で幕開け。開口一番は会場の雰囲気を作るトップバッターです。緊張感の中でもノビノビとした高座をこなしてくれました。胸の内では何だか親心のような気持ちで、応援しながら聴いてしまうオバサンです。

菊之丞師匠の登場で、会場の雰囲気がグッと柔らかになりました。すっかり落ち着きというか貫禄さえも感じさせます。『死ぬなら今』は演題の意味が最後に納得できる一席です。昔も今も「地獄の沙汰も金次第」なのか、恐いはずの地獄の番人達もお金には弱いようで笑えます。噺の中の「地獄寄席」の出演者は、志ん生、文楽、圓生の超豪華版。談志が前座さんなんですから、地獄はイヤですがここはぜひ覗いてみたいですね。

お仲入り後の二席目は怪談噺、三遊亭円朝作『真景累ヶ淵』から『豊志賀の死』。富本節の師匠、豊志賀のところに稽古に通ってくる若い新吉。師匠と弟子の立場が、男女の関係に発展したあたりから悲劇が始まります。豊志賀が若い弟子のお久と新吉の中を邪推しながら、形相が変わってゆくところで一段と怖い展開に。会場の照明も暗く落とされ、客席はシーンと聴き入っていました。圓朝師の数々の名作は二十代の頃に創作された聞き、作家としても天才的な力量を備えた、不世出の落語家さんだと改めて感じさせられます。

怪談噺の後はお客さんの気持ちを和ましてお返しするのが寄席の流儀とか。普段から日舞の稽古に励んでいる師匠が、「夕暮れ」を踊ってくれました。舞いながら「もうすぐ終わります」なんて笑わせますね。

終演後に一歩外に出ると、連日の猛残暑という現実に戻されます。もういい加減ウンザリ。涼風が恋しくてたまりません。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第24回 「菊之丞の会」  レポート 2012/04/26

第24回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第24回「菊之丞の会」 2012/04/26

街々にも新入社員らしい若者が目に付くこの頃です。初登場の前座さんは林家正蔵師匠の五番弟子、林家なな子さん。面差しが「海老名系」なのでご親戚?…かと思いきやその関係はないそうです。元気な『転失気』はこれからの伸び代を充分に感じさせてくれました。

藤色鮮やかな小紋柄のお召物の菊之丞師匠、一席目は廓噺『三枚起請』。師匠の十八番かと思ったのですが、二つ目のとき以来のほとんど「ネタおろし」とか。騙し騙されの男女の世相は、今も昔も変わらないようです。「あら、まぁ~」「おや、わぁ~」と棟梁の話に相槌を打つ茶屋の女将と、三人に問い詰められて俄然開き直る花魁喜瀬川の描写が、この噺家さんならではの真骨頂でした。

お仲入り後の二席目は『夢金』。寝言でも「百両欲しい、二百両欲しい」とうなっている船頭の熊蔵。「娘を殺して金を山分けに」と持ち掛ける謎の侍を、中洲に置いてきぼりにして娘を助けます。ほんのお礼にと手にした金包みは百両もの大金だったが…。雪の舞い散る夜の大川の描写が風流で秀逸です。女を演じるときの師匠には天性の巧みさが光っていましたが、このところ聴く武士や荒くれ男のスゴ味ある表現にも、一段と磨きがかかってきたのを私は感じています。

桜前線は東北へ。境内ではすっかり葉桜になりましたが、若葉の緑が目にも鮮やかです。先ほどまで降っていた雨も上がって、「ちょっと行こう」のおじさんたちはニコニコと横丁に消えていきました。

昨年は震災のため中止になった恒例『神楽坂落語まつり』は、6月30日(土)と7月7日(土)に開催されます。こちらもどうぞお楽しみにお運びください。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第23回 「菊之丞の会」  レポート 2012/02/09

第23回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第23回「菊之丞の会」 2012/02/09

太鼓の音で幕が開くと、叩き手はなんと菊之丞師匠。嬉しい演出です。いろいろな寄席太鼓を解説してくださいました。一番太鼓は「どんと来い、金持って来い」、開演5分前を知らせる二番太鼓は「お多福、来い来い」、終演後は「出てけ出てけ、てんでんバラバラ」、最後は「カラ(空)、カラ」とか。寄席の太鼓はしゃべってるんですね。続いては、トリの鳴物入りの演目のため菊之丞師がお呼びした、下座三味線の金山はる師匠と出囃子の披露。前座さんの「上がり」から始まり、文楽・志ん生・彦六・志ん朝・円生・三木助・三平・円菊といった大師匠たちの高座に登場する姿が、次々と目に浮かんできました。

前座さんは柳家おじさん。この名前と親しみやすい風貌は誰でも一度で覚えます。お馴染みの「子ほめ」を、やや緊張気味ながらも忠実にこなしてくれました。

菊之丞師匠の一席目は「犬の眼」。登場人物全員が、滑稽でまるで漫画のような面々です。犬がソフトバンクのお父さん犬だったり、途中に入る「クリクリポッコン」や「クリクリドックン」といった擬音が何とも可愛らしく、会場の大きな笑いを誘います。

仲入りのワインサービスの後二席目へ。紋付の黒羽織で菊之丞師登場。お題は「たちきり」です。比較的笑いの少ない元々は上方の噺ですが、花柳界の遊び方を織り込んだ人情味溢れる演目として、江戸前の噺家さんたちも好んで挑戦されるようです。茶屋遊びに狂った末に百日間の蔵住まいを言い渡された若旦那に、毎日手紙を届ける芸者の小春…昔はこんな慎ましやかな恋愛があったんでしょうね。

今年の寒さは一入です。それでも春は少しずつ近づいてきますね。終演後に私の連れのおじさんたちは、「冷え込むので餃子鍋と紹興酒」と言って消えてゆきました。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第22回 「菊之丞の会」  レポート 2011/10/27

第22回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第22回「菊之丞の会」2011/10/27

毘沙門寄席登場3回目の入船亭辰じんさん。親をやり込めてチャッカリお小遣い稼ぎという「真田小僧」。子供の方が何枚も上手です。若々しさの中にも落ち着きが出て、女性の演じ方に工夫が見てとれました。前座さんの着実な成長は、何だか胸がウキウキとして嬉しく思えるものです。

菊之丞師匠の一席目は「千両みかん」。昔は冬場に限った季節の果物だったみかんを、真夏に食べたいと恋焦がれて患い付いてしまった若旦那。番頭さんは“幻のみかん”を求めて東奔西走。でも番頭さんに教えて上げます。毎年八月初旬の休日に谷中の全生庵というお寺で開催される「円朝まつり」に行けば、『千両みかん』と名の付いた冷凍みかんを、汗だくになった噺家さんたちが売ってますよ。「みかん一個で千両かぁ」とため息をついて、三房三百両と一緒に行方をくらますなんて…太く短く生きるのも人生かなと思わせるオチが粋です。

お仲入り後の菊之丞師は「らくだ」。フグにあたってふぐ死んでしまったらくださん以上に、乱暴者でガラの悪い強面の兄貴分を、声の出し方や目の動きで表現した巧みな人物描写が光りました。どちらかというと得意芸は女形のイメージがあった師匠ですが、今回は芸域の幅を一層感じさせるものでした。気弱でおとなしい屑屋の久六さんが、酒の勢いを借りて強気に変わってゆく見せ場では、会場を大喜びさせてくれました。長講モノとして最後まではしょらないで演じてくれたのは、「菊之丞の会」だからでしょうね。

ようやく秋めいて心地の良い宵でした。お煮染めを肴に燗酒もいけそうですね。でもフグを食べるならどうぞお料理屋さんで。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第21回 「菊之丞の会」  レポート 2011/07/28

第21回「菊之丞の会」

神楽坂毘沙門寄席 第21回「菊之丞の会」2011/7/28

雨上がりの蒸し暑い中、開場前からお客様の長い列ができました。

まずは毘沙門寄席二度目の登場、ポニーテール姿も可愛いらしい春風亭ぽっぽさん。講談口調独特の流れるようなテンポの修羅場読みを織り込んで、「やかん」を披露。前回からさらに一段の成長ぶりを感じさせてくれました。末が楽しみな前座さんですね。

菊之丞師匠、涼しげな白い縞の着物に絽の羽織がお似合いです。先の文楽師匠を思わせる「酢豆腐」が出ました。暑くて何も調理したくないこの季節、「安くて、数があって、皆の口に入り、腹にたまらず、衛生にいいもの」なら、私だって探したいです。気障な通人の若旦那が師匠とダブって、大笑いしてしまいました。ところでウチの豆腐は昨日買ったんだし、冷蔵庫に入っているし、大丈夫なはず…。

ワインとチーズのサービスを楽しんだお仲入り後は「抜け雀」。風采の上がらない主人公が、実はスーパー名工だった…という噺が落語にはいくつかありますが、元は講談というネタも多いようです。小田原宿の「相模屋」に投宿した身なりの良くない謎の大酒呑み、正直者で気弱な宿屋の主人、あわてん坊で気の強いおカミさんたちの愉快な人物描写に、会場は笑いに包まれます。衝立に描かれた雀が、差し込んだ朝日を浴びて空に飛び立つ様子が目に浮かびました。

帰りの境内ではおじさんたちが話し合っています。「うん、生ビール。小一時間だけ」。ホントでしょうか?ノドも渇いて美味しいでしょうが、飲み過ぎにはどうぞご注意を。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第20回 「菊之丞の会」  レポート 2011/04/28

第20回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第20回「菊之丞の会」/2011年4月28日

昨年12月以来の「菊之丞の会」です。今回からは色物芸を入れないで、菊之丞の二席をたっぷり聴いていただく会となりました。引き続き7月、10月、来年1月という開催が予定されています。

今日の幕開けは柳家おじさん。前座さんとしても面白い芸名は、師匠の権太楼さんが付けたそうです。年齢不詳でしたが35歳とのこと、若々しい話し振りで「狸札」の一席でした。

菊之丞師匠、初夏を思わせる明るい姿で登場。古今亭お得意の「火焔太鼓」です。二ツ目の頃からこの噺家さんには、師匠の円菊さんとは違う芸風を感じていたのですが、久々に聴いたこの演目からは、箇所箇所に円菊師独特の滑稽味が顔を出して、師弟の血統を感じさせてくれました。

お茶とお菓子のお仲入りタイムを挟んで、菊之丞師の二席目は「百川」です。「百川」といえば円生、円生といえば「百川」といわれたほどの、三遊亭円生師の十八番として知られるこのネタを、さて菊之丞流にどう演じるのかと興味津々でした。料理屋に奉公に入ったばかりの百兵衛さんの田舎言葉と、気短かな若い江戸っ子たちのべらんめえ口調の対比が、面白い聴かせどころを巧みに演出しました。

それにしても、先月からの余震が都内でも続いています。開演中に揺れがなくて幸いでした。狂歌を一首詠みます。
「済むまでは 余震来るなと 祈りつつ ズボン下ろして 便座に座る」

神楽坂半公

神楽坂毘沙門寄席 第19回 「菊之丞の会」  レポート 2010/12/09

第19回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第19回「菊之丞の会」10/12/9

毘沙門寄席登場2回目の入船亭辰じんさん。前回同様「携帯電話等、音の出る~」の諸注意を高らかに発したあと、「金明竹」を基本に忠実に丁寧に演じてくれました。前回からの確実な成長振りを窺わせます。

菊之丞師匠の一席目は、思いつきで鍼を始めた道楽者の若旦那と、そのお相手に指名された幇間が騒動を巻き起こすお馴染み「幇間(たいこ)腹」。壁、猫に続いて一八に白羽の矢が立ったからサァ~大変!何か企みがあるときの若旦那の怪しい目つきが笑えます。このネタをすっかり自分のものにしている師匠の余裕を感じました。

ワインの出たお仲入り後のゆる~い雰囲気のなか、奇術のアサダ二世さん登場。記憶にあるアダチ竜光さんそっくりで驚きました…お若い方はご存知ありませんよね。客席と世間話をしながら、凄いこと何気なくやってしまう芸の力に感心。カードマジックに続き、穴が開いたはずのお札を元通りにして、会場は「エー!?」の声と拍手喝采に包まれました。

菊之丞師トリの一席は「心眼」。先代桂文楽師匠十八番の大ネタです。目が開くようお薬師様に願掛けをする按摩さんの梅喜、それを支える健気な女房お竹の、仲睦まじい夫婦の人物像が巧みに演じられます。ちょっとした浮気心から怖い夢を見てしまった梅喜は、今の幸せに改めて気付かされてしまいます。殿方、どうぞ御用心!終演後のお話で分かりましたが、今日がネタ卸しだったとのこと。初挑戦の緊張感を乗り越えながら芸域を拡げていく、噺家さんのプロ根性を垣間見ることができました。

暖かな歳の瀬です。来年のことを言っても鬼も笑わない時期になってしまいました。明るいニュースの少ないこの頃ですが、来る年も「笑いは活力だ!」を気合にしたいです。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第18回 「菊之丞の会」  レポート 2010/09/09

第18回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第18回「菊之丞の会」10/9/9

前座さんの名は一度聞いたら忘れられない“三遊亭ありがとう”。私の大好きな歌之介師匠のお弟子さんです。張りのある元気な声で、「牛ほめ」を丁寧に演じてくれました。

“嵐を呼ぶ雨男”、菊之丞師匠の一席目は残暑厳しい折からか「船徳」。道楽の果てに勘当され、船宿で居候の若旦那が船頭になろうとするから、周囲はもう大騒ぎに。猪牙舟という交通手段が今ではなくなりましたが、徳さん以外の船頭さんでなら一度乗ってみたいものです。客あしらいの巧みな船宿のお女将が出てくるくだりは、師匠の芸の真骨頂です。

ワインの出るお仲入り後は、江戸太神楽の和助・小花さん。翁家和楽・小楽師匠のお弟子さん同士とか。神楽坂の節分会には毎年獅子舞とともに出演されています。日本古来の傘・鞠・土瓶・枡の曲芸で凄い技が次々に飛び出して、会場は「ホォー」の声まじりの拍手喝采に包まれました。最後は息の合ったナイフジャグリングで締めくくってくれました。

菊之丞師、涼しげな色の単衣で登場。今日仕立て上がったばかりだそうで、とてもよくお似合いです。トリの一席は「大山詣り」。信仰を兼ねた登山は江戸時代の庶民の楽しみだったようです。旅の間は喧嘩をしないという約束を破った荒くれ者熊五郎は、その罰として丸坊主にされてしまいます。酔いつぶれて寝ている熊さんの頭を酒で湿して、扇子を剃刀に見立ててジョリジョリと剃っていく場面が、妙にリアルで印象に残りました。

夜風が随分涼しいと感じる晩でしたが、これでも平年並みの気温だったそうです。記録的な猛暑に見舞われたこの夏も、どうにか終わりを告げてくれようとしています。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第6回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/08/19

第6回「白鳥・扇辰二人会」-320

第6回「辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会」2010/8/19

ピンク地に可愛らしいスワンの紋入り着物で登場の白鳥師匠。猛暑のせいか日にちも曜日も間違えて、会場も?の大笑い。幕開けの「ナースコール」は、とんでもない看護士の “みどりちゃん”が、イチゴ柄が体型で伸び広がったトマト柄パンツを見せたりで、大騒動を巻き起こします。果たしてこの娘は白衣の天使なのか、はたまた悪魔の化身なのか!?

いつもスッキリとしたお召しの扇辰師匠は「団子坂奇談」。侍の生駒弥太郎は蕎麦屋の娘、おきぬに一目惚れして弟子入り。そこで見た娘の正体は…真夜中の駒下駄の音、暗闇の静けさが巧みに表現され、シ~ンと静まり返った会場に突然師匠の大声が、「ギャー!!」。不意を衝かれてドッキリの場内は、一瞬騒然としたあとで笑い声が沸き上がりました。あ~ぁ怖かった。

仲入り後は扇辰師の「家見舞」。先立つものがない二人が日頃から世話になっている兄ィに新居祝いをと考えた末、肥甕(こえがめ)洗って水甕としてプレゼント。喜んだ兄ィは、甕の水に浸かった豆腐・古漬け・ご飯とふるまってくれるから、さぁ大変。昔の生活習慣との違いで、こういう噺も説明を多くせざるを得ない世の中になってきたことでしょうね。

トリの白鳥師、今や小学生の教科書にも載っている「あたま山」…とは全く無関係の「新あたま山」。お得意のマシンガンテンポ全開で、出るわ出るわの医学事典。胃爺さんや肝臓姉さんの労働者階級vs脳ミソ・前頭葉・間脳の支配者階級が頭の上での大バトルとなります。最後は人間に備わっている自己再生能力が解決してしまうエンディングへと、奇想天外ストーリーは驀進します。

全国的に記録的な猛暑の八月となりました。夜でもムッとする屋外ですが、まだ今日は少しマシな方です。早く元気な虫の音が聞きたいこの頃です。

神楽坂がん子