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神楽坂毘沙門寄席 第18回 「菊之丞の会」  レポート 2010/09/09

第18回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第18回「菊之丞の会」10/9/9

前座さんの名は一度聞いたら忘れられない“三遊亭ありがとう”。私の大好きな歌之介師匠のお弟子さんです。張りのある元気な声で、「牛ほめ」を丁寧に演じてくれました。

“嵐を呼ぶ雨男”、菊之丞師匠の一席目は残暑厳しい折からか「船徳」。道楽の果てに勘当され、船宿で居候の若旦那が船頭になろうとするから、周囲はもう大騒ぎに。猪牙舟という交通手段が今ではなくなりましたが、徳さん以外の船頭さんでなら一度乗ってみたいものです。客あしらいの巧みな船宿のお女将が出てくるくだりは、師匠の芸の真骨頂です。

ワインの出るお仲入り後は、江戸太神楽の和助・小花さん。翁家和楽・小楽師匠のお弟子さん同士とか。神楽坂の節分会には毎年獅子舞とともに出演されています。日本古来の傘・鞠・土瓶・枡の曲芸で凄い技が次々に飛び出して、会場は「ホォー」の声まじりの拍手喝采に包まれました。最後は息の合ったナイフジャグリングで締めくくってくれました。

菊之丞師、涼しげな色の単衣で登場。今日仕立て上がったばかりだそうで、とてもよくお似合いです。トリの一席は「大山詣り」。信仰を兼ねた登山は江戸時代の庶民の楽しみだったようです。旅の間は喧嘩をしないという約束を破った荒くれ者熊五郎は、その罰として丸坊主にされてしまいます。酔いつぶれて寝ている熊さんの頭を酒で湿して、扇子を剃刀に見立ててジョリジョリと剃っていく場面が、妙にリアルで印象に残りました。

夜風が随分涼しいと感じる晩でしたが、これでも平年並みの気温だったそうです。記録的な猛暑に見舞われたこの夏も、どうにか終わりを告げてくれようとしています。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第6回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/08/19

第6回「白鳥・扇辰二人会」-320

第6回「辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会」2010/8/19

ピンク地に可愛らしいスワンの紋入り着物で登場の白鳥師匠。猛暑のせいか日にちも曜日も間違えて、会場も?の大笑い。幕開けの「ナースコール」は、とんでもない看護士の “みどりちゃん”が、イチゴ柄が体型で伸び広がったトマト柄パンツを見せたりで、大騒動を巻き起こします。果たしてこの娘は白衣の天使なのか、はたまた悪魔の化身なのか!?

いつもスッキリとしたお召しの扇辰師匠は「団子坂奇談」。侍の生駒弥太郎は蕎麦屋の娘、おきぬに一目惚れして弟子入り。そこで見た娘の正体は…真夜中の駒下駄の音、暗闇の静けさが巧みに表現され、シ~ンと静まり返った会場に突然師匠の大声が、「ギャー!!」。不意を衝かれてドッキリの場内は、一瞬騒然としたあとで笑い声が沸き上がりました。あ~ぁ怖かった。

仲入り後は扇辰師の「家見舞」。先立つものがない二人が日頃から世話になっている兄ィに新居祝いをと考えた末、肥甕(こえがめ)洗って水甕としてプレゼント。喜んだ兄ィは、甕の水に浸かった豆腐・古漬け・ご飯とふるまってくれるから、さぁ大変。昔の生活習慣との違いで、こういう噺も説明を多くせざるを得ない世の中になってきたことでしょうね。

トリの白鳥師、今や小学生の教科書にも載っている「あたま山」…とは全く無関係の「新あたま山」。お得意のマシンガンテンポ全開で、出るわ出るわの医学事典。胃爺さんや肝臓姉さんの労働者階級vs脳ミソ・前頭葉・間脳の支配者階級が頭の上での大バトルとなります。最後は人間に備わっている自己再生能力が解決してしまうエンディングへと、奇想天外ストーリーは驀進します。

全国的に記録的な猛暑の八月となりました。夜でもムッとする屋外ですが、まだ今日は少しマシな方です。早く元気な虫の音が聞きたいこの頃です。

神楽坂がん子

神楽坂 まちづくり・住まいづくり塾 第97回 (100806)

NPO法人「粋なまちづくり倶楽部」主催 
第97回神楽坂まちづくり・住まいづくり塾  
よもやま話シリーズ 第64話

「日本出版クラブ(袋町6)から見た神楽坂」

話し手:  大橋 祥宏さん 
(財)日本出版クラブ 前専務理事 

■大橋祥宏さん(横須賀市在住)は、平成18年まで袋町の日本出版クラブ
専務理事として活躍されました。
日本出版クラブは昭和28年9月に設立された公益法人で、以降「出版会の
総親和」という精神を掲げ、出版に関する調査、研修会、会館運営などを
通じて出版人の交流親睦をはかり、出版文化の発展に寄与しているものです。

■今回は出版クラブが昭和28年に神楽坂に設立されたいきさつを中心に、
当時のまちの印象やその後の神楽坂の変遷など、貴重なまちの証言をして頂く
予定です。
なお、大橋さんは現在「横須賀学の会」を主宰して、地域の文化の掘り起こしを
されています。
また子供たちに多大な影響を与えつづけている「息子よ、アメリカは父さんの
敵だった」(平成7年出版、農山漁村文化協会)の著者でもあります。

■皆様奮ってご参加下さい。

               記

◇開催日時      平成22年8月6日(金)夜19時~21時

◇場  所       神楽坂通り商店会事務所     
            ・東新神楽坂エミネンス6階/新宿区神楽坂3丁目2

◇参加費(支援金)  活動への支援寄付金として 一般1000円。
  学生500円。
               (※寄付金は会場費、資料代、通信費の他、
   今後のNPO活動のための費用に充当させ
   ていただきます。)

◇主  催     神楽坂発まちづくり・すまいづくりNPO法人
            「粋なまちづくり倶楽部」

◇共  催      神楽坂まちづくりの会

◇お問い合わせ     NPO法人「粋なまちづくり倶楽部」塾事務局
             ℡ 03-3260-6260
    (新宿区西五軒町3-18-103 山下馨建築アトリエ内
    /担当:山下 馨)

            ※「粋なまちづくり倶楽部」は、東京都の認証をうけ、
   まちづくり・すまいづくりに関するNPO法人として活動
   しております。

神楽坂毘沙門寄席 第17回 「菊之丞の会」  レポート 2010/07/08

第17回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第17回「菊之丞の会」10/7/8

前座は辰じんさん。もう一つの恒例毘沙門寄席、“辰鳥跡をにごさず”の入船亭扇辰師匠のお弟子さんです。一席の前に声を張り上げた「携帯電話、アラームなど~」で、会場は一気にマナーモードに。「手紙無筆」で元気な幕開けを勤めました。

菊之丞師匠の「湯屋番」は是非聴いてみたいと常々思っていました。道楽の果ての勘当で、現代では死語に等しい“居候”の身となった若旦那。奉公先のお湯屋で憧れの番台へ上がってからは、芝居がかった妄想が次々にふくらんでもう大騒動です。どうしようもない駄目な奴ながら、愛すべき若旦那の人となりが師匠とダブって(失礼!)、会場は大爆笑。

お仲入り後は津軽三味線の太田家元九郎さん。黒紋付に袴姿で堂々と登場。あまりの見事な撥さばきにシーンとした客席でしたが、「終ったんだきんど…」と津軽訛りの一言に拍手喝采。朴訥な津軽弁が演奏にタイミング良く入って、何とも楽しい高座になりました。弾くのではなく叩くという太棹の力強さは、心に沁みる優しさも感じさせてくれるんですね。

涼しげな絽の黒羽織姿でトリの菊之丞師は「転宅」。お調子者の間抜けなドロボーが、女にまんまと騙されてしまいます。ふと思いましたが、菊之丞さんの演じる女は女形の中村福助に似ています。福助さんも妙に滑稽さのにじみ出る役者です。落語とお芝居を同時に楽しんだようなお得な一席でした。

梅雨の最中なのに雨もなく、湿気の少ない過ごしやすい一日でした。日本チームの大健闘が光ったワールドカップサッカーも、いよいよ決勝を残すのみとなりました。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第5回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/05/27

第5回「白鳥・扇辰二人会」-320

第5回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/5/27

久々の毘沙門寄席は扇辰師匠で幕開けです。怠け者の与太郎を世話する杢兵衛さんは、お前も商いをしてみろと勧めます。お馴染み「道具屋」は、ポワ~ンとした与太郎と同業の友蔵さんとの掛け合い、暇つぶしに立ち寄る客とのちぐはぐなやりとりが滑稽です。

続いての白鳥師匠、ワールドカップサッカーいよいよ間近を意識してか、お得意のアディダス着物の奇抜なスタイルで登場。演目は「ラーメン千本桜」。ご本人曰く、これは超大作とのこと。お仲入りを挟んで前・後編の二部に分けての長講です。

今は公園でラーメン屋台店主の高島裕次郎は、大手ラーメンチェーン「ゲンちゃんラーメン」の次男であり、東京ラーメン戦争を制した男であった。兄である慎太郎との確執から家を出て今の姿に…と、劇的なストーリー展開の予感。でもやっぱり珍妙な爆笑場面の連続。多くのハチャメチャな人物が登場するため、師匠もとうとう混乱か?名前をトチッてのやり直しがまたまた大笑いを誘いました。

後半は、いよいよ東西ラーメン王決定戦で九州ラーメン「平田屋」との対決。火傷を負わされた慎太郎に代わり試合に挑む裕次郎にも、難局が待ち構えます。自信のスープに小細工され窮地に陥りますが、小学生の弟子の一言からアメリカンドックを利用するという奇抜なアイデアで見事に優勝。兄弟間の確執も解けめでたし、めでたしのエンディングに会場は大喜びでした。まぁ、あんまり食べてみたいラーメンではありませんでしたがね。

トリは扇辰師の「五人廻し」。昭和の名人たちの名演も多く録音に残る、おかし味たっぷりの廓噺です。花魁がなかなか自分の部屋に現れないのを待ちくたびれた客たちが、口々に「玉代返せ」とこの店の若い衆(マネージャー)相手にクレームをつけます。職人・官吏・田舎モン・粋人と様々なタイプの客が、人物描写の巧みさで演じ分けられます。いやはや昔も今も接客業は大変ですね。

満員のお客様にも長袖とジャケット姿を多く見かけましたが、入梅前の肌寒い晩でした。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第4回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/02/18

第4回「白鳥・扇辰二人会」-320

第4回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/2/18

白鳥・扇辰二人会も第4回目を迎え、徐々に神楽坂にも浸透してきた感があります。対照的な芸風がぶつかり合う高座が、幅広い落語ファンの気持ちを捉えます。

一席目は扇辰師匠の「手紙無筆」。知ったかぶりの意地っ張りや見栄坊は、身の周りにも見られそうで笑いを誘います。コミュニケーションをケータイメールにばかり頼って、いつの間にか無筆になっている現代人は…何だか自分でも少し心配になってきましたが。

真っ赤な着物にアディダス風三本白線!賑々しく登場の白鳥師匠。「初天神」は奇想天外、前代未聞、この噺がここまで破天荒にという驚きの白鳥流でした。おとっつあんと金坊のやりとりに会場は大爆笑。何とも物凄い親子ですね!

仲入り後は扇辰師で「鰍沢」。登場する三人の人物描写と、雪深い山中の凍えるような季節感の表現に、噺家の力量が発揮される名作中の名作です。三遊亭円朝師が三題噺の会で即座にこれを創作したと聞くから驚きます。冷え切った身体が囲炉裏の火で徐々に温まっていく様子や、「おまはんは、誰?」と凄む女の怖さ、滑稽なだけが味わいではない落語の奥深さを感じさせてくれます。

白鳥師再登場で雰囲気はガラリと変わり、トリの演題は「ピンピンマン」。男性用惚れ薬の名前なんですね。女性用は「ウーマンマン」ですって!?商売不振に追い込まれた薬局の老夫婦が考え出した苦肉の挽回策ストーリーは、まァ~凄いテンポで進行します。抱腹絶倒で笑い疲れてしまいました。

東京も今朝方は雪が降りました。今年の冬はとても寒く感じます。こんなときは大いに笑って温まりたいですね。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第26回 「志らく四季の会 冬の部」  レポート 2010/01/21

第26回「志らく四季の会」-320

第26回 志らく四季の会 冬の部 10/1/21

らく太さん、今年の毘沙門寄席一番手に登場で「二人旅」です。前座さんはこれから始まる寄席の雰囲気を盛り上げる役割も担います。「三人旅は一人乞食」、仲間外れのない二人旅が一番…と謎掛け問答の道中が滑稽です。

続いての志ら乃さんは、場所中でもあり「花筏」。大の相撲好きな提灯屋が、「朝は米二升、酒二升、夜も同じで二日間、締めて八升(勝)。勝ち越しだ」の甘い言葉につられて大関の替え玉になる破目に。表情の豊かさとスピード感たっぷりの話ぶりが爆笑を誘います。

志らく師匠の一席目、本来は前座噺ともいわれる「狸賽」でしたが、細部にわたる個性的な工夫は流石です。噺のマクラの「胃カメラ」体験談では場内が沸き、経験のある私も思わずうなずいていました。ところで私の大発見です。師匠のお辞儀姿の何と「美しい」こと!扇子の置き方、指のつき方、頭の下げ方がとても丁寧で、首から背中にかけての線が何ともカタチ良く美しく見えるのです。

トリは本来なら歳の瀬に演じられる「芝浜」。多くの師匠の名演が録音にも残りますが、私は上手な噺家さんの必須条件として、「女を演じる力」を挙げたいと思います。貧しかった頃の一途で健気なおカミさん、商売も軌道に乗ってからの落ち着いたおカミさんを、志らく師は巧みに演じ分けました。「魚屋のお前さんが好きだったんだよ」の一言には思わずホロリとさせられます。

年が明けたと思ったら早三週間が経ちます。今年も数々の上質な演芸が神楽坂から発信されます。皆さまどうぞご期待ください。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第16回 「菊之丞の会」  レポート 2009/12/10

第16回「菊之丞の会」-320

第16回「菊之丞の会」09/12/10

開口一番は小朝師匠の三番弟子、春風亭ぽっぽさん。高座に登場と同時に会場からは「可愛らしい~」の声が。師匠も十八番の「金明竹」を歯切れ良く元気いっぱいにこなしてくれました。これからが楽しみな前座さんです。

「いよっ!待ってました」の声が飛び、菊之丞師匠の登場で会場の空気は一層華やかに。若旦那の恋わずらい解消に、幼馴染みの熊さんが大奮闘する「崇徳院」です。上下の歌の句をやり取りして恋心を伝え合うなんて…ロマンチックな時代があったもんです。財布、煙草入れ、短冊と手拭一本で表現する、巧みな芸が披露されました。

私の世代にはお馴染みのニューマリオネット。子供の頃からご夫婦二人の息の合った操り人形の芸が大好きでした。今回は伊原寛さんお一人で軽妙なおしゃべりの後、小原庄助さんが酔っ払ってゆく過程がユーモラスな「会津磐梯山」と、ドジョウすくいの腰振りが愉快な「安来節」を演じて、満場は拍手喝采の渦と化しました。体調によりお休みされていると聞く奥様も戻って来て、またお二人の元気な芸を是非見せていただきたいものです。

トリは菊之丞師の「井戸の茶碗」。登場人物が皆、正直者で善人という講談ネタにもある人情噺です。それぞれが潔癖なまでの生き方を貫くストーリーは、年の瀬の締めくくりに相応しくハッピーエンド。武士と町人の人物描写に芸の力量が発揮されました。

今年一年を象徴する漢字は「新」が選ばれました。来る年も気分を新たに「笑門来福」と行きたいですね。皆様良いお年をお迎え下さい。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第3回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2009/11/26

第3回「白鳥・扇辰二人会」-320

第三回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2009/11/26

白鳥師匠、半身が黒、半身がグレー地にスワン柄を染め抜いた何とも奇抜な着物姿で登場。襟元の赤が目立ちます。噺はいつもながら独特の快テンポで進みます。聴く側も乗り遅れないように付いていかないといけません。落語界もグローバル化が進んで、民族衣装を着たケニア人噺家が現れ、「饅頭こわい」から「文七元結」、挙句の果てには「芝浜」のパロディまで飛び出して…まぁ、大騒ぎの「新ランゴランゴ」でした。

扇辰師匠はネタ下ろしで「三番蔵」。質屋の小僧定吉は、店の主人からお仕置に一番古い三番蔵に入れられてしまいます。暗くて怖い蔵の中でしたが、思いがけず可愛い人形の精「お花ちゃん」と楽しい時を過ごす場面では、少年と少女の初々しいやりとりがほのぼのと表現されます。お話の節々に、昔の質屋ではお客とのやりとりにも人情味があったことを感じさせてくれました。プレゼントされたブランド物のバッグを質屋で現金に換える、ちゃっかり娘が跋扈する現代とはえらい違いですね。

ワインの香りが残るお仲入り後は白鳥師で、演歌のタイトルみたいな「悲しみは日本海に向けて」。江戸っ子になるには→落語家→誰に弟子入りするか…というお定まりの図から外れ、「古典は邪道だ!」と唱える名古屋訛りの円丈師匠のもとで修行を積んだ、新潟出身者の悲しみ(?)が哀々切々と語られます。危ない雪下ろし作業は大切にされた長男でなく次男の役割だった、「もしか兄ちゃん」は大受け。この師匠ならではの面白パワー全開です。

「国技館 たった二人に この騒ぎ」。丁度いま九州本場所中ですが、トリの扇辰師は相撲噺「阿武松(おうのまつ)」。大喰らいがもとで破門となるも帰るに帰れず、残りの銭で飯の食べおさめをして死のうと思いつめた関取が、板橋の宿屋の主人に助けられ六代目横綱阿武松緑之助を張るまでの出世噺です。宿場町が栄えて農業が盛んだったころの板橋の様子も交えて、気品のある紫のお召姿でじっくりと聴かせてくれました。

師走間近なのに今夜も暖かい陽気でした。大いに笑って身体が温まったのかもしれませんが、環境の温暖化が気になります。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第25回 「志らく四季の会 秋の部」  レポート 2009/10/29

第25回「志らく四季の会」-320

第25回 志らく四季の会 秋の部 09/10/29

今回もスターターは元気にらく太さん。いきなりの言い立てで「ガマの油」の売り口上です。大道芸でお馴染みの迫力ある口調に拍手が沸きました。

続いては志ら乃さんで「湯屋番」。放蕩三昧の末に勘当されてお湯屋に奉公することとなった若旦那を、志ら乃流では今風の話題を挟みながら速いテンポの大熱演でした。私とすれば、のほほ~んと浮世離れした滑稽味が自然ににじみ出る若旦那も好きなんですが。

一席目の志らく師匠は「道灌」。初めてこのネタを高座にかけた前座時代の思い出を語りながら噺に入っていきます。それにしても世界の名画を評する八五郎の鑑賞眼は天才的です。「麗子像」が戸塚ヨットスクール校長にされて会場は大爆笑。岸田劉生画伯がこの話を聞いたらどう思われるでしょうね?

ワインサービスのお仲入り後は志らく師の「中村仲蔵」。落語家になって25年目にして覚えた一番の大ネタとか。志らく流の仲蔵がどんな演じ方になるのか大いに楽しみにしていました。その見せ場のなさから「弁当幕」と言われていた忠臣蔵五段目に、果敢に挑戦して新しい斧定九郎をつくり上げるまでの迷い、苦労をじっくりと聴かせます。先日お亡くなりになった三遊亭円楽師匠も十八番にされていましたが、私は先代の林家正蔵(彦六)師匠のこの噺に感動したことが忘れられません。やはり話術の技量以上に、その年齢にならなければ演じられない何かがあるんでしょうか。10年、いや20年後にも志らく師の仲蔵を是非聴いてみたいものだと感じました。

「まち飛びフェスタ」真っ最中の神楽坂です。連日の暖かな日和の中、まちの文化祭は多くのお客様で賑わっています。

神楽坂がん子