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神楽坂 毘沙門寄席

神楽坂毘沙門寄席 第22回 「菊之丞の会」  レポート 2011/10/27

第22回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第22回「菊之丞の会」2011/10/27

毘沙門寄席登場3回目の入船亭辰じんさん。親をやり込めてチャッカリお小遣い稼ぎという「真田小僧」。子供の方が何枚も上手です。若々しさの中にも落ち着きが出て、女性の演じ方に工夫が見てとれました。前座さんの着実な成長は、何だか胸がウキウキとして嬉しく思えるものです。

菊之丞師匠の一席目は「千両みかん」。昔は冬場に限った季節の果物だったみかんを、真夏に食べたいと恋焦がれて患い付いてしまった若旦那。番頭さんは“幻のみかん”を求めて東奔西走。でも番頭さんに教えて上げます。毎年八月初旬の休日に谷中の全生庵というお寺で開催される「円朝まつり」に行けば、『千両みかん』と名の付いた冷凍みかんを、汗だくになった噺家さんたちが売ってますよ。「みかん一個で千両かぁ」とため息をついて、三房三百両と一緒に行方をくらますなんて…太く短く生きるのも人生かなと思わせるオチが粋です。

お仲入り後の菊之丞師は「らくだ」。フグにあたってふぐ死んでしまったらくださん以上に、乱暴者でガラの悪い強面の兄貴分を、声の出し方や目の動きで表現した巧みな人物描写が光りました。どちらかというと得意芸は女形のイメージがあった師匠ですが、今回は芸域の幅を一層感じさせるものでした。気弱でおとなしい屑屋の久六さんが、酒の勢いを借りて強気に変わってゆく見せ場では、会場を大喜びさせてくれました。長講モノとして最後まではしょらないで演じてくれたのは、「菊之丞の会」だからでしょうね。

ようやく秋めいて心地の良い宵でした。お煮染めを肴に燗酒もいけそうですね。でもフグを食べるならどうぞお料理屋さんで。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第21回 「菊之丞の会」  レポート 2011/07/28

第21回「菊之丞の会」

神楽坂毘沙門寄席 第21回「菊之丞の会」2011/7/28

雨上がりの蒸し暑い中、開場前からお客様の長い列ができました。

まずは毘沙門寄席二度目の登場、ポニーテール姿も可愛いらしい春風亭ぽっぽさん。講談口調独特の流れるようなテンポの修羅場読みを織り込んで、「やかん」を披露。前回からさらに一段の成長ぶりを感じさせてくれました。末が楽しみな前座さんですね。

菊之丞師匠、涼しげな白い縞の着物に絽の羽織がお似合いです。先の文楽師匠を思わせる「酢豆腐」が出ました。暑くて何も調理したくないこの季節、「安くて、数があって、皆の口に入り、腹にたまらず、衛生にいいもの」なら、私だって探したいです。気障な通人の若旦那が師匠とダブって、大笑いしてしまいました。ところでウチの豆腐は昨日買ったんだし、冷蔵庫に入っているし、大丈夫なはず…。

ワインとチーズのサービスを楽しんだお仲入り後は「抜け雀」。風采の上がらない主人公が、実はスーパー名工だった…という噺が落語にはいくつかありますが、元は講談というネタも多いようです。小田原宿の「相模屋」に投宿した身なりの良くない謎の大酒呑み、正直者で気弱な宿屋の主人、あわてん坊で気の強いおカミさんたちの愉快な人物描写に、会場は笑いに包まれます。衝立に描かれた雀が、差し込んだ朝日を浴びて空に飛び立つ様子が目に浮かびました。

帰りの境内ではおじさんたちが話し合っています。「うん、生ビール。小一時間だけ」。ホントでしょうか?ノドも渇いて美味しいでしょうが、飲み過ぎにはどうぞご注意を。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第20回 「菊之丞の会」  レポート 2011/04/28

第20回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第20回「菊之丞の会」/2011年4月28日

昨年12月以来の「菊之丞の会」です。今回からは色物芸を入れないで、菊之丞の二席をたっぷり聴いていただく会となりました。引き続き7月、10月、来年1月という開催が予定されています。

今日の幕開けは柳家おじさん。前座さんとしても面白い芸名は、師匠の権太楼さんが付けたそうです。年齢不詳でしたが35歳とのこと、若々しい話し振りで「狸札」の一席でした。

菊之丞師匠、初夏を思わせる明るい姿で登場。古今亭お得意の「火焔太鼓」です。二ツ目の頃からこの噺家さんには、師匠の円菊さんとは違う芸風を感じていたのですが、久々に聴いたこの演目からは、箇所箇所に円菊師独特の滑稽味が顔を出して、師弟の血統を感じさせてくれました。

お茶とお菓子のお仲入りタイムを挟んで、菊之丞師の二席目は「百川」です。「百川」といえば円生、円生といえば「百川」といわれたほどの、三遊亭円生師の十八番として知られるこのネタを、さて菊之丞流にどう演じるのかと興味津々でした。料理屋に奉公に入ったばかりの百兵衛さんの田舎言葉と、気短かな若い江戸っ子たちのべらんめえ口調の対比が、面白い聴かせどころを巧みに演出しました。

それにしても、先月からの余震が都内でも続いています。開演中に揺れがなくて幸いでした。狂歌を一首詠みます。
「済むまでは 余震来るなと 祈りつつ ズボン下ろして 便座に座る」

神楽坂半公

神楽坂毘沙門寄席 第19回 「菊之丞の会」  レポート 2010/12/09

第19回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第19回「菊之丞の会」10/12/9

毘沙門寄席登場2回目の入船亭辰じんさん。前回同様「携帯電話等、音の出る~」の諸注意を高らかに発したあと、「金明竹」を基本に忠実に丁寧に演じてくれました。前回からの確実な成長振りを窺わせます。

菊之丞師匠の一席目は、思いつきで鍼を始めた道楽者の若旦那と、そのお相手に指名された幇間が騒動を巻き起こすお馴染み「幇間(たいこ)腹」。壁、猫に続いて一八に白羽の矢が立ったからサァ~大変!何か企みがあるときの若旦那の怪しい目つきが笑えます。このネタをすっかり自分のものにしている師匠の余裕を感じました。

ワインの出たお仲入り後のゆる~い雰囲気のなか、奇術のアサダ二世さん登場。記憶にあるアダチ竜光さんそっくりで驚きました…お若い方はご存知ありませんよね。客席と世間話をしながら、凄いこと何気なくやってしまう芸の力に感心。カードマジックに続き、穴が開いたはずのお札を元通りにして、会場は「エー!?」の声と拍手喝采に包まれました。

菊之丞師トリの一席は「心眼」。先代桂文楽師匠十八番の大ネタです。目が開くようお薬師様に願掛けをする按摩さんの梅喜、それを支える健気な女房お竹の、仲睦まじい夫婦の人物像が巧みに演じられます。ちょっとした浮気心から怖い夢を見てしまった梅喜は、今の幸せに改めて気付かされてしまいます。殿方、どうぞ御用心!終演後のお話で分かりましたが、今日がネタ卸しだったとのこと。初挑戦の緊張感を乗り越えながら芸域を拡げていく、噺家さんのプロ根性を垣間見ることができました。

暖かな歳の瀬です。来年のことを言っても鬼も笑わない時期になってしまいました。明るいニュースの少ないこの頃ですが、来る年も「笑いは活力だ!」を気合にしたいです。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第18回 「菊之丞の会」  レポート 2010/09/09

第18回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第18回「菊之丞の会」10/9/9

前座さんの名は一度聞いたら忘れられない“三遊亭ありがとう”。私の大好きな歌之介師匠のお弟子さんです。張りのある元気な声で、「牛ほめ」を丁寧に演じてくれました。

“嵐を呼ぶ雨男”、菊之丞師匠の一席目は残暑厳しい折からか「船徳」。道楽の果てに勘当され、船宿で居候の若旦那が船頭になろうとするから、周囲はもう大騒ぎに。猪牙舟という交通手段が今ではなくなりましたが、徳さん以外の船頭さんでなら一度乗ってみたいものです。客あしらいの巧みな船宿のお女将が出てくるくだりは、師匠の芸の真骨頂です。

ワインの出るお仲入り後は、江戸太神楽の和助・小花さん。翁家和楽・小楽師匠のお弟子さん同士とか。神楽坂の節分会には毎年獅子舞とともに出演されています。日本古来の傘・鞠・土瓶・枡の曲芸で凄い技が次々に飛び出して、会場は「ホォー」の声まじりの拍手喝采に包まれました。最後は息の合ったナイフジャグリングで締めくくってくれました。

菊之丞師、涼しげな色の単衣で登場。今日仕立て上がったばかりだそうで、とてもよくお似合いです。トリの一席は「大山詣り」。信仰を兼ねた登山は江戸時代の庶民の楽しみだったようです。旅の間は喧嘩をしないという約束を破った荒くれ者熊五郎は、その罰として丸坊主にされてしまいます。酔いつぶれて寝ている熊さんの頭を酒で湿して、扇子を剃刀に見立ててジョリジョリと剃っていく場面が、妙にリアルで印象に残りました。

夜風が随分涼しいと感じる晩でしたが、これでも平年並みの気温だったそうです。記録的な猛暑に見舞われたこの夏も、どうにか終わりを告げてくれようとしています。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第6回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/08/19

第6回「白鳥・扇辰二人会」-320

第6回「辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会」2010/8/19

ピンク地に可愛らしいスワンの紋入り着物で登場の白鳥師匠。猛暑のせいか日にちも曜日も間違えて、会場も?の大笑い。幕開けの「ナースコール」は、とんでもない看護士の “みどりちゃん”が、イチゴ柄が体型で伸び広がったトマト柄パンツを見せたりで、大騒動を巻き起こします。果たしてこの娘は白衣の天使なのか、はたまた悪魔の化身なのか!?

いつもスッキリとしたお召しの扇辰師匠は「団子坂奇談」。侍の生駒弥太郎は蕎麦屋の娘、おきぬに一目惚れして弟子入り。そこで見た娘の正体は…真夜中の駒下駄の音、暗闇の静けさが巧みに表現され、シ~ンと静まり返った会場に突然師匠の大声が、「ギャー!!」。不意を衝かれてドッキリの場内は、一瞬騒然としたあとで笑い声が沸き上がりました。あ~ぁ怖かった。

仲入り後は扇辰師の「家見舞」。先立つものがない二人が日頃から世話になっている兄ィに新居祝いをと考えた末、肥甕(こえがめ)洗って水甕としてプレゼント。喜んだ兄ィは、甕の水に浸かった豆腐・古漬け・ご飯とふるまってくれるから、さぁ大変。昔の生活習慣との違いで、こういう噺も説明を多くせざるを得ない世の中になってきたことでしょうね。

トリの白鳥師、今や小学生の教科書にも載っている「あたま山」…とは全く無関係の「新あたま山」。お得意のマシンガンテンポ全開で、出るわ出るわの医学事典。胃爺さんや肝臓姉さんの労働者階級vs脳ミソ・前頭葉・間脳の支配者階級が頭の上での大バトルとなります。最後は人間に備わっている自己再生能力が解決してしまうエンディングへと、奇想天外ストーリーは驀進します。

全国的に記録的な猛暑の八月となりました。夜でもムッとする屋外ですが、まだ今日は少しマシな方です。早く元気な虫の音が聞きたいこの頃です。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第17回 「菊之丞の会」  レポート 2010/07/08

第17回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第17回「菊之丞の会」10/7/8

前座は辰じんさん。もう一つの恒例毘沙門寄席、“辰鳥跡をにごさず”の入船亭扇辰師匠のお弟子さんです。一席の前に声を張り上げた「携帯電話、アラームなど~」で、会場は一気にマナーモードに。「手紙無筆」で元気な幕開けを勤めました。

菊之丞師匠の「湯屋番」は是非聴いてみたいと常々思っていました。道楽の果ての勘当で、現代では死語に等しい“居候”の身となった若旦那。奉公先のお湯屋で憧れの番台へ上がってからは、芝居がかった妄想が次々にふくらんでもう大騒動です。どうしようもない駄目な奴ながら、愛すべき若旦那の人となりが師匠とダブって(失礼!)、会場は大爆笑。

お仲入り後は津軽三味線の太田家元九郎さん。黒紋付に袴姿で堂々と登場。あまりの見事な撥さばきにシーンとした客席でしたが、「終ったんだきんど…」と津軽訛りの一言に拍手喝采。朴訥な津軽弁が演奏にタイミング良く入って、何とも楽しい高座になりました。弾くのではなく叩くという太棹の力強さは、心に沁みる優しさも感じさせてくれるんですね。

涼しげな絽の黒羽織姿でトリの菊之丞師は「転宅」。お調子者の間抜けなドロボーが、女にまんまと騙されてしまいます。ふと思いましたが、菊之丞さんの演じる女は女形の中村福助に似ています。福助さんも妙に滑稽さのにじみ出る役者です。落語とお芝居を同時に楽しんだようなお得な一席でした。

梅雨の最中なのに雨もなく、湿気の少ない過ごしやすい一日でした。日本チームの大健闘が光ったワールドカップサッカーも、いよいよ決勝を残すのみとなりました。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第5回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/05/27

第5回「白鳥・扇辰二人会」-320

第5回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/5/27

久々の毘沙門寄席は扇辰師匠で幕開けです。怠け者の与太郎を世話する杢兵衛さんは、お前も商いをしてみろと勧めます。お馴染み「道具屋」は、ポワ~ンとした与太郎と同業の友蔵さんとの掛け合い、暇つぶしに立ち寄る客とのちぐはぐなやりとりが滑稽です。

続いての白鳥師匠、ワールドカップサッカーいよいよ間近を意識してか、お得意のアディダス着物の奇抜なスタイルで登場。演目は「ラーメン千本桜」。ご本人曰く、これは超大作とのこと。お仲入りを挟んで前・後編の二部に分けての長講です。

今は公園でラーメン屋台店主の高島裕次郎は、大手ラーメンチェーン「ゲンちゃんラーメン」の次男であり、東京ラーメン戦争を制した男であった。兄である慎太郎との確執から家を出て今の姿に…と、劇的なストーリー展開の予感。でもやっぱり珍妙な爆笑場面の連続。多くのハチャメチャな人物が登場するため、師匠もとうとう混乱か?名前をトチッてのやり直しがまたまた大笑いを誘いました。

後半は、いよいよ東西ラーメン王決定戦で九州ラーメン「平田屋」との対決。火傷を負わされた慎太郎に代わり試合に挑む裕次郎にも、難局が待ち構えます。自信のスープに小細工され窮地に陥りますが、小学生の弟子の一言からアメリカンドックを利用するという奇抜なアイデアで見事に優勝。兄弟間の確執も解けめでたし、めでたしのエンディングに会場は大喜びでした。まぁ、あんまり食べてみたいラーメンではありませんでしたがね。

トリは扇辰師の「五人廻し」。昭和の名人たちの名演も多く録音に残る、おかし味たっぷりの廓噺です。花魁がなかなか自分の部屋に現れないのを待ちくたびれた客たちが、口々に「玉代返せ」とこの店の若い衆(マネージャー)相手にクレームをつけます。職人・官吏・田舎モン・粋人と様々なタイプの客が、人物描写の巧みさで演じ分けられます。いやはや昔も今も接客業は大変ですね。

満員のお客様にも長袖とジャケット姿を多く見かけましたが、入梅前の肌寒い晩でした。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第4回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/02/18

第4回「白鳥・扇辰二人会」-320

第4回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/2/18

白鳥・扇辰二人会も第4回目を迎え、徐々に神楽坂にも浸透してきた感があります。対照的な芸風がぶつかり合う高座が、幅広い落語ファンの気持ちを捉えます。

一席目は扇辰師匠の「手紙無筆」。知ったかぶりの意地っ張りや見栄坊は、身の周りにも見られそうで笑いを誘います。コミュニケーションをケータイメールにばかり頼って、いつの間にか無筆になっている現代人は…何だか自分でも少し心配になってきましたが。

真っ赤な着物にアディダス風三本白線!賑々しく登場の白鳥師匠。「初天神」は奇想天外、前代未聞、この噺がここまで破天荒にという驚きの白鳥流でした。おとっつあんと金坊のやりとりに会場は大爆笑。何とも物凄い親子ですね!

仲入り後は扇辰師で「鰍沢」。登場する三人の人物描写と、雪深い山中の凍えるような季節感の表現に、噺家の力量が発揮される名作中の名作です。三遊亭円朝師が三題噺の会で即座にこれを創作したと聞くから驚きます。冷え切った身体が囲炉裏の火で徐々に温まっていく様子や、「おまはんは、誰?」と凄む女の怖さ、滑稽なだけが味わいではない落語の奥深さを感じさせてくれます。

白鳥師再登場で雰囲気はガラリと変わり、トリの演題は「ピンピンマン」。男性用惚れ薬の名前なんですね。女性用は「ウーマンマン」ですって!?商売不振に追い込まれた薬局の老夫婦が考え出した苦肉の挽回策ストーリーは、まァ~凄いテンポで進行します。抱腹絶倒で笑い疲れてしまいました。

東京も今朝方は雪が降りました。今年の冬はとても寒く感じます。こんなときは大いに笑って温まりたいですね。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第26回 「志らく四季の会 冬の部」  レポート 2010/01/21

第26回「志らく四季の会」-320

第26回 志らく四季の会 冬の部 10/1/21

らく太さん、今年の毘沙門寄席一番手に登場で「二人旅」です。前座さんはこれから始まる寄席の雰囲気を盛り上げる役割も担います。「三人旅は一人乞食」、仲間外れのない二人旅が一番…と謎掛け問答の道中が滑稽です。

続いての志ら乃さんは、場所中でもあり「花筏」。大の相撲好きな提灯屋が、「朝は米二升、酒二升、夜も同じで二日間、締めて八升(勝)。勝ち越しだ」の甘い言葉につられて大関の替え玉になる破目に。表情の豊かさとスピード感たっぷりの話ぶりが爆笑を誘います。

志らく師匠の一席目、本来は前座噺ともいわれる「狸賽」でしたが、細部にわたる個性的な工夫は流石です。噺のマクラの「胃カメラ」体験談では場内が沸き、経験のある私も思わずうなずいていました。ところで私の大発見です。師匠のお辞儀姿の何と「美しい」こと!扇子の置き方、指のつき方、頭の下げ方がとても丁寧で、首から背中にかけての線が何ともカタチ良く美しく見えるのです。

トリは本来なら歳の瀬に演じられる「芝浜」。多くの師匠の名演が録音にも残りますが、私は上手な噺家さんの必須条件として、「女を演じる力」を挙げたいと思います。貧しかった頃の一途で健気なおカミさん、商売も軌道に乗ってからの落ち着いたおカミさんを、志らく師は巧みに演じ分けました。「魚屋のお前さんが好きだったんだよ」の一言には思わずホロリとさせられます。

年が明けたと思ったら早三週間が経ちます。今年も数々の上質な演芸が神楽坂から発信されます。皆さまどうぞご期待ください。

神楽坂がん子