神楽坂 毘沙門寄席」カテゴリーアーカイブ

神楽坂 毘沙門寄席

神楽坂毘沙門寄席 第17回 「菊之丞の会」  レポート 2010/07/08

第17回「菊之丞の会」-320

神楽坂毘沙門寄席 第17回「菊之丞の会」10/7/8

前座は辰じんさん。もう一つの恒例毘沙門寄席、“辰鳥跡をにごさず”の入船亭扇辰師匠のお弟子さんです。一席の前に声を張り上げた「携帯電話、アラームなど~」で、会場は一気にマナーモードに。「手紙無筆」で元気な幕開けを勤めました。

菊之丞師匠の「湯屋番」は是非聴いてみたいと常々思っていました。道楽の果ての勘当で、現代では死語に等しい“居候”の身となった若旦那。奉公先のお湯屋で憧れの番台へ上がってからは、芝居がかった妄想が次々にふくらんでもう大騒動です。どうしようもない駄目な奴ながら、愛すべき若旦那の人となりが師匠とダブって(失礼!)、会場は大爆笑。

お仲入り後は津軽三味線の太田家元九郎さん。黒紋付に袴姿で堂々と登場。あまりの見事な撥さばきにシーンとした客席でしたが、「終ったんだきんど…」と津軽訛りの一言に拍手喝采。朴訥な津軽弁が演奏にタイミング良く入って、何とも楽しい高座になりました。弾くのではなく叩くという太棹の力強さは、心に沁みる優しさも感じさせてくれるんですね。

涼しげな絽の黒羽織姿でトリの菊之丞師は「転宅」。お調子者の間抜けなドロボーが、女にまんまと騙されてしまいます。ふと思いましたが、菊之丞さんの演じる女は女形の中村福助に似ています。福助さんも妙に滑稽さのにじみ出る役者です。落語とお芝居を同時に楽しんだようなお得な一席でした。

梅雨の最中なのに雨もなく、湿気の少ない過ごしやすい一日でした。日本チームの大健闘が光ったワールドカップサッカーも、いよいよ決勝を残すのみとなりました。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第5回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/05/27

第5回「白鳥・扇辰二人会」-320

第5回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/5/27

久々の毘沙門寄席は扇辰師匠で幕開けです。怠け者の与太郎を世話する杢兵衛さんは、お前も商いをしてみろと勧めます。お馴染み「道具屋」は、ポワ~ンとした与太郎と同業の友蔵さんとの掛け合い、暇つぶしに立ち寄る客とのちぐはぐなやりとりが滑稽です。

続いての白鳥師匠、ワールドカップサッカーいよいよ間近を意識してか、お得意のアディダス着物の奇抜なスタイルで登場。演目は「ラーメン千本桜」。ご本人曰く、これは超大作とのこと。お仲入りを挟んで前・後編の二部に分けての長講です。

今は公園でラーメン屋台店主の高島裕次郎は、大手ラーメンチェーン「ゲンちゃんラーメン」の次男であり、東京ラーメン戦争を制した男であった。兄である慎太郎との確執から家を出て今の姿に…と、劇的なストーリー展開の予感。でもやっぱり珍妙な爆笑場面の連続。多くのハチャメチャな人物が登場するため、師匠もとうとう混乱か?名前をトチッてのやり直しがまたまた大笑いを誘いました。

後半は、いよいよ東西ラーメン王決定戦で九州ラーメン「平田屋」との対決。火傷を負わされた慎太郎に代わり試合に挑む裕次郎にも、難局が待ち構えます。自信のスープに小細工され窮地に陥りますが、小学生の弟子の一言からアメリカンドックを利用するという奇抜なアイデアで見事に優勝。兄弟間の確執も解けめでたし、めでたしのエンディングに会場は大喜びでした。まぁ、あんまり食べてみたいラーメンではありませんでしたがね。

トリは扇辰師の「五人廻し」。昭和の名人たちの名演も多く録音に残る、おかし味たっぷりの廓噺です。花魁がなかなか自分の部屋に現れないのを待ちくたびれた客たちが、口々に「玉代返せ」とこの店の若い衆(マネージャー)相手にクレームをつけます。職人・官吏・田舎モン・粋人と様々なタイプの客が、人物描写の巧みさで演じ分けられます。いやはや昔も今も接客業は大変ですね。

満員のお客様にも長袖とジャケット姿を多く見かけましたが、入梅前の肌寒い晩でした。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第4回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2010/02/18

第4回「白鳥・扇辰二人会」-320

第4回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2010/2/18

白鳥・扇辰二人会も第4回目を迎え、徐々に神楽坂にも浸透してきた感があります。対照的な芸風がぶつかり合う高座が、幅広い落語ファンの気持ちを捉えます。

一席目は扇辰師匠の「手紙無筆」。知ったかぶりの意地っ張りや見栄坊は、身の周りにも見られそうで笑いを誘います。コミュニケーションをケータイメールにばかり頼って、いつの間にか無筆になっている現代人は…何だか自分でも少し心配になってきましたが。

真っ赤な着物にアディダス風三本白線!賑々しく登場の白鳥師匠。「初天神」は奇想天外、前代未聞、この噺がここまで破天荒にという驚きの白鳥流でした。おとっつあんと金坊のやりとりに会場は大爆笑。何とも物凄い親子ですね!

仲入り後は扇辰師で「鰍沢」。登場する三人の人物描写と、雪深い山中の凍えるような季節感の表現に、噺家の力量が発揮される名作中の名作です。三遊亭円朝師が三題噺の会で即座にこれを創作したと聞くから驚きます。冷え切った身体が囲炉裏の火で徐々に温まっていく様子や、「おまはんは、誰?」と凄む女の怖さ、滑稽なだけが味わいではない落語の奥深さを感じさせてくれます。

白鳥師再登場で雰囲気はガラリと変わり、トリの演題は「ピンピンマン」。男性用惚れ薬の名前なんですね。女性用は「ウーマンマン」ですって!?商売不振に追い込まれた薬局の老夫婦が考え出した苦肉の挽回策ストーリーは、まァ~凄いテンポで進行します。抱腹絶倒で笑い疲れてしまいました。

東京も今朝方は雪が降りました。今年の冬はとても寒く感じます。こんなときは大いに笑って温まりたいですね。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第26回 「志らく四季の会 冬の部」  レポート 2010/01/21

第26回「志らく四季の会」-320

第26回 志らく四季の会 冬の部 10/1/21

らく太さん、今年の毘沙門寄席一番手に登場で「二人旅」です。前座さんはこれから始まる寄席の雰囲気を盛り上げる役割も担います。「三人旅は一人乞食」、仲間外れのない二人旅が一番…と謎掛け問答の道中が滑稽です。

続いての志ら乃さんは、場所中でもあり「花筏」。大の相撲好きな提灯屋が、「朝は米二升、酒二升、夜も同じで二日間、締めて八升(勝)。勝ち越しだ」の甘い言葉につられて大関の替え玉になる破目に。表情の豊かさとスピード感たっぷりの話ぶりが爆笑を誘います。

志らく師匠の一席目、本来は前座噺ともいわれる「狸賽」でしたが、細部にわたる個性的な工夫は流石です。噺のマクラの「胃カメラ」体験談では場内が沸き、経験のある私も思わずうなずいていました。ところで私の大発見です。師匠のお辞儀姿の何と「美しい」こと!扇子の置き方、指のつき方、頭の下げ方がとても丁寧で、首から背中にかけての線が何ともカタチ良く美しく見えるのです。

トリは本来なら歳の瀬に演じられる「芝浜」。多くの師匠の名演が録音にも残りますが、私は上手な噺家さんの必須条件として、「女を演じる力」を挙げたいと思います。貧しかった頃の一途で健気なおカミさん、商売も軌道に乗ってからの落ち着いたおカミさんを、志らく師は巧みに演じ分けました。「魚屋のお前さんが好きだったんだよ」の一言には思わずホロリとさせられます。

年が明けたと思ったら早三週間が経ちます。今年も数々の上質な演芸が神楽坂から発信されます。皆さまどうぞご期待ください。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第16回 「菊之丞の会」  レポート 2009/12/10

第16回「菊之丞の会」-320

第16回「菊之丞の会」09/12/10

開口一番は小朝師匠の三番弟子、春風亭ぽっぽさん。高座に登場と同時に会場からは「可愛らしい~」の声が。師匠も十八番の「金明竹」を歯切れ良く元気いっぱいにこなしてくれました。これからが楽しみな前座さんです。

「いよっ!待ってました」の声が飛び、菊之丞師匠の登場で会場の空気は一層華やかに。若旦那の恋わずらい解消に、幼馴染みの熊さんが大奮闘する「崇徳院」です。上下の歌の句をやり取りして恋心を伝え合うなんて…ロマンチックな時代があったもんです。財布、煙草入れ、短冊と手拭一本で表現する、巧みな芸が披露されました。

私の世代にはお馴染みのニューマリオネット。子供の頃からご夫婦二人の息の合った操り人形の芸が大好きでした。今回は伊原寛さんお一人で軽妙なおしゃべりの後、小原庄助さんが酔っ払ってゆく過程がユーモラスな「会津磐梯山」と、ドジョウすくいの腰振りが愉快な「安来節」を演じて、満場は拍手喝采の渦と化しました。体調によりお休みされていると聞く奥様も戻って来て、またお二人の元気な芸を是非見せていただきたいものです。

トリは菊之丞師の「井戸の茶碗」。登場人物が皆、正直者で善人という講談ネタにもある人情噺です。それぞれが潔癖なまでの生き方を貫くストーリーは、年の瀬の締めくくりに相応しくハッピーエンド。武士と町人の人物描写に芸の力量が発揮されました。

今年一年を象徴する漢字は「新」が選ばれました。来る年も気分を新たに「笑門来福」と行きたいですね。皆様良いお年をお迎え下さい。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第3回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2009/11/26

第3回「白鳥・扇辰二人会」-320

第三回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2009/11/26

白鳥師匠、半身が黒、半身がグレー地にスワン柄を染め抜いた何とも奇抜な着物姿で登場。襟元の赤が目立ちます。噺はいつもながら独特の快テンポで進みます。聴く側も乗り遅れないように付いていかないといけません。落語界もグローバル化が進んで、民族衣装を着たケニア人噺家が現れ、「饅頭こわい」から「文七元結」、挙句の果てには「芝浜」のパロディまで飛び出して…まぁ、大騒ぎの「新ランゴランゴ」でした。

扇辰師匠はネタ下ろしで「三番蔵」。質屋の小僧定吉は、店の主人からお仕置に一番古い三番蔵に入れられてしまいます。暗くて怖い蔵の中でしたが、思いがけず可愛い人形の精「お花ちゃん」と楽しい時を過ごす場面では、少年と少女の初々しいやりとりがほのぼのと表現されます。お話の節々に、昔の質屋ではお客とのやりとりにも人情味があったことを感じさせてくれました。プレゼントされたブランド物のバッグを質屋で現金に換える、ちゃっかり娘が跋扈する現代とはえらい違いですね。

ワインの香りが残るお仲入り後は白鳥師で、演歌のタイトルみたいな「悲しみは日本海に向けて」。江戸っ子になるには→落語家→誰に弟子入りするか…というお定まりの図から外れ、「古典は邪道だ!」と唱える名古屋訛りの円丈師匠のもとで修行を積んだ、新潟出身者の悲しみ(?)が哀々切々と語られます。危ない雪下ろし作業は大切にされた長男でなく次男の役割だった、「もしか兄ちゃん」は大受け。この師匠ならではの面白パワー全開です。

「国技館 たった二人に この騒ぎ」。丁度いま九州本場所中ですが、トリの扇辰師は相撲噺「阿武松(おうのまつ)」。大喰らいがもとで破門となるも帰るに帰れず、残りの銭で飯の食べおさめをして死のうと思いつめた関取が、板橋の宿屋の主人に助けられ六代目横綱阿武松緑之助を張るまでの出世噺です。宿場町が栄えて農業が盛んだったころの板橋の様子も交えて、気品のある紫のお召姿でじっくりと聴かせてくれました。

師走間近なのに今夜も暖かい陽気でした。大いに笑って身体が温まったのかもしれませんが、環境の温暖化が気になります。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第25回 「志らく四季の会 秋の部」  レポート 2009/10/29

第25回「志らく四季の会」-320

第25回 志らく四季の会 秋の部 09/10/29

今回もスターターは元気にらく太さん。いきなりの言い立てで「ガマの油」の売り口上です。大道芸でお馴染みの迫力ある口調に拍手が沸きました。

続いては志ら乃さんで「湯屋番」。放蕩三昧の末に勘当されてお湯屋に奉公することとなった若旦那を、志ら乃流では今風の話題を挟みながら速いテンポの大熱演でした。私とすれば、のほほ~んと浮世離れした滑稽味が自然ににじみ出る若旦那も好きなんですが。

一席目の志らく師匠は「道灌」。初めてこのネタを高座にかけた前座時代の思い出を語りながら噺に入っていきます。それにしても世界の名画を評する八五郎の鑑賞眼は天才的です。「麗子像」が戸塚ヨットスクール校長にされて会場は大爆笑。岸田劉生画伯がこの話を聞いたらどう思われるでしょうね?

ワインサービスのお仲入り後は志らく師の「中村仲蔵」。落語家になって25年目にして覚えた一番の大ネタとか。志らく流の仲蔵がどんな演じ方になるのか大いに楽しみにしていました。その見せ場のなさから「弁当幕」と言われていた忠臣蔵五段目に、果敢に挑戦して新しい斧定九郎をつくり上げるまでの迷い、苦労をじっくりと聴かせます。先日お亡くなりになった三遊亭円楽師匠も十八番にされていましたが、私は先代の林家正蔵(彦六)師匠のこの噺に感動したことが忘れられません。やはり話術の技量以上に、その年齢にならなければ演じられない何かがあるんでしょうか。10年、いや20年後にも志らく師の仲蔵を是非聴いてみたいものだと感じました。

「まち飛びフェスタ」真っ最中の神楽坂です。連日の暖かな日和の中、まちの文化祭は多くのお客様で賑わっています。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第15回 「菊之丞の会」  レポート 2009/09/24

第15回「菊之丞の会」

毘沙門寄席 第15回「菊之丞の会」09/9/24

開口一番の前座さんは、毘沙門寄席三度目のお目見え古今亭志ん坊さん。張りのある声で「無精床」を元気いっぱいに演じます。志ん坊さんのヘアースタイルはといえば、坊主頭に刈り込んで一休さんみたいでした。

菊之丞師匠一席目は幇間(たいこもち)一八の滑稽顛末記、「鰻の幇間(たいこ)」。旦那を取り巻いてゴチにあり付くつもりが散々な目に。騙されたことに気付いてから腹いせに当り散らす一八の愚痴が聞かせどころ。仲居さんへの八つ当たりは、水っぽい酒、薄く切った新香、コシの強い鰻、悪趣味な絵柄の徳利とお猪口について、と続きます。

仲入り後は奇術のダーク広和さん。パッと見には人の良さそうなニコニコしたオジサンです(失礼!)。ところがいとも簡単に凄いマジックを地味にやっちゃうんです。「ついて来て下さ~い」の声に会場は拍手と笑いの渦になりました。大喜びのお客さんの反応を高座側から感じたダークさんが、一番嬉しそうな笑顔を見せていました。

さあ、今日のお待ちかね菊之丞師の「品川心中」。吉原の廓噺と違って潮の香りが漂ってくるようです。リバイバル上映で見た日活映画の名作、「幕末太陽伝」を思い出しました。品川女郎のお染さんと貸し本屋金蔵さんとの絶妙なやりとりが、志ん生、志ん朝と続いた古今亭ワールドへと誘ってくれます。

いい季節になって街をそぞろ歩きの人も多くなりました。10月は毎年秋恒例の「まち飛びフェスタ」も開催されて、一層賑やかな神楽坂となります。

神楽坂がん子

神楽坂毘沙門寄席 第2回 「白鳥・扇辰二人会」  レポート 2009/08/27

第2回「白鳥・扇辰二人会」-320

8月27日 第二回 辰鳥跡をにごさず
 白鳥・扇辰二人会

第二回目となる毘沙門寄席の新シリーズですが、女性ファンの多さが目立ちます。

幕開けは扇辰さんの「甲府い」です。豆腐屋の主人と奉公人のこころ温まる噺ですが、キッチリとした江戸前の芸風は扇橋師匠譲りでしょうか。主人公、善吉の律儀な物腰が、この噺家さんの真面目さを表わしています。

続いては出囃子「白鳥の湖」に乗って、ライトなイエローグリーンの着物姿の兄さん登場です。胸の紋にも大きな白鳥が。演目は「アジアそば」。ハチャメチャなインド人が、奇妙で達者な日本語を機関銃のごとくまくしたてます。

仲入り後、扇辰師は「河童の手」。ネタ下ろしだそうですが、作者はなんと白鳥師匠。新作の奇才が創る落語も、この師匠の手に掛かると古典の趣が出るのが味です。最後の「ケケケ」では、高座に河童の顔が浮かびました。

白鳥師がトリをとります。まさに新型の「寝床」に大爆笑の場内でした。「明烏」の浦里花魁と時次郎が出てくるんですね。円丈師匠のお弟子さんとして磨かれた芸風なんでしょう。でも大師匠の故六代目円生師がお聞きになったら卒倒モンでしょうね。

神楽坂半公

神楽坂毘沙門寄席 第24回 「志らく四季の会 夏の部」  レポート 2009/07/09

第24回「志らく四季の会」-320

第24回 志らく四季の会 夏の部 09/7/9

蒸し暑い時季にふさわしく、開口一番はらく太さんの「青菜」。お酒を冷たくして、鯉の洗い、菜のおひたしと、昔から涼を呼ぶ食の工夫があったんですね。愉快な登場人物一人ひとりの人物描写が見せ場です。志らく師匠評して、「登場者が全部らく太自身に見える。落語は難しい」とはその通りかと…でも、それが芸の修行です。

毘沙門寄席久しぶりの志ら乃さん登場で「笠碁」です。以前より落ち着いた感じを受けました。仲良し碁敵の意地の張り合い~喧嘩~仲直りまでが、二人の会話と表情の変化で軽妙に展開されます。「わがまま!ヘボ!ザル!頑固!」と罵り合うくだりでは、ガンコ、ガンコと私が叱られているようで、思わず小さくなってしまいました。

志らく師は本題前に実話「石神井公園のケーキ屋」。どこかにいそうな変わった人物が登場して場内大爆笑!続いては愉快な酔っぱらいと小僧さんとの掛け合いがユーモラスな「居酒屋」。先代の金馬師匠の十八番だったのは有名です。でも志らく流では破天荒に、新潟の幻の酒「コシノ…」と来て、寒梅でなくジュンコに行ってしまいます。次に何が飛び出すか予測不可能なのがこの師匠の「味」です。

志らく師のトリは「たちきり」。若旦那と芸者さんの純愛物語は、和事のお芝居を思わせる上方落語です。三味線の鳴物が入るオリジナルを変えて、若旦那と幽霊の小久とを再会させるという師匠独自の展開で聴かせます。会えない淋しさで病に伏して死んでしまうなんて…今どきの娘さんには「チョー信じらんな~い」お話です。

降らなかったものの、梅雨の最中らしい空模様でした。夏本番はもうすぐ。毘沙門天境内のほうずき市、神楽坂阿波踊りの賑やかな頃となります。

神楽坂がん子