神楽坂毘沙門寄席 第58回「菊之丞の会」レポート (2025/1/23) 2025年最初の「菊之丞の会」。トップバッターは隅田川わたしさん。私もファンの一人ですが隅田川馬石師匠のお弟子さんです。この季節らしい『初天神』の凧揚げバージョンを好演。前座さんとは思えないくらいの落ち着きぶりで声も良く、先の楽しみな噺家さんの一人だと感じました。それにしても羽根突き・独楽回し・凧揚げ・福笑い・双六・カルタ取りなどのお正月遊びは見かけなくなりました。今は最新のゲームオンリーなんでしょうか? 上品な淡い空色の着物に紅梅を思わせるような優しい風合いの羽織姿で、菊之丞師匠の高座です。新年のご挨拶に続き、初夢の話から『天狗裁き』へ。「女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、家主までもが…」のフレーズが繰り返される度に場内は笑いに溢れます。お白洲でのお裁きから果ては天狗に高尾山に連れ去られ、その身は八つ裂きに…というところで目が覚めます。今夜の私も夢にうなされませんように。 二席目はお侍の噺『柳田格之進』に相応しい黒の羽織とお召し物で登場。もともとは講釈ネタで、「柳田の堪忍袋」という高潔な武士の生き様を描いた一席です。最近では草薙剛君の主演で「碁盤斬り」という映画にもなりました。愚直なまでに一徹な格之進、誠実な大店の主人、商人気質丸出しの番頭、それぞれの人物描写が見事です。嫌疑のかかった父上のために苦界に身を沈めた娘のお絹さんが、他から五十両が出てきた言われたとき、今どきの娘さんだったら「冗談じゃないわよ!」と怒るでしょうねと師匠。でも、私なら「落とし前はどうつけてくれんのさ!」と凄んじゃいます。 次回の「第59回菊之丞の会」は4月17日(木)が予定されています。またどうぞ皆様、お誘い合わせの上お運びくださいませ。 神楽坂がん子