第三回 辰鳥跡をにごさず 白鳥・扇辰二人会 2009/11/26
白鳥師匠、半身が黒、半身がグレー地にスワン柄を染め抜いた何とも奇抜な着物姿で登場。襟元の赤が目立ちます。噺はいつもながら独特の快テンポで進みます。聴く側も乗り遅れないように付いていかないといけません。落語界もグローバル化が進んで、民族衣装を着たケニア人噺家が現れ、「饅頭こわい」から「文七元結」、挙句の果てには「芝浜」のパロディまで飛び出して…まぁ、大騒ぎの「新ランゴランゴ」でした。
扇辰師匠はネタ下ろしで「三番蔵」。質屋の小僧定吉は、店の主人からお仕置に一番古い三番蔵に入れられてしまいます。暗くて怖い蔵の中でしたが、思いがけず可愛い人形の精「お花ちゃん」と楽しい時を過ごす場面では、少年と少女の初々しいやりとりがほのぼのと表現されます。お話の節々に、昔の質屋ではお客とのやりとりにも人情味があったことを感じさせてくれました。プレゼントされたブランド物のバッグを質屋で現金に換える、ちゃっかり娘が跋扈する現代とはえらい違いですね。
ワインの香りが残るお仲入り後は白鳥師で、演歌のタイトルみたいな「悲しみは日本海に向けて」。江戸っ子になるには→落語家→誰に弟子入りするか…というお定まりの図から外れ、「古典は邪道だ!」と唱える名古屋訛りの円丈師匠のもとで修行を積んだ、新潟出身者の悲しみ(?)が哀々切々と語られます。危ない雪下ろし作業は大切にされた長男でなく次男の役割だった、「もしか兄ちゃん」は大受け。この師匠ならではの面白パワー全開です。
「国技館 たった二人に この騒ぎ」。丁度いま九州本場所中ですが、トリの扇辰師は相撲噺「阿武松(おうのまつ)」。大喰らいがもとで破門となるも帰るに帰れず、残りの銭で飯の食べおさめをして死のうと思いつめた関取が、板橋の宿屋の主人に助けられ六代目横綱阿武松緑之助を張るまでの出世噺です。宿場町が栄えて農業が盛んだったころの板橋の様子も交えて、気品のある紫のお召姿でじっくりと聴かせてくれました。
師走間近なのに今夜も暖かい陽気でした。大いに笑って身体が温まったのかもしれませんが、環境の温暖化が気になります。
神楽坂がん子